新卒一括採用の変遷と世代間の意識調査
新卒一括採用は日本の雇用文化を象徴する制度であり、世代ごとの意識の違いが就職活動における経験にも大きく影響しています。近年の調査を基に、各世代の特徴や内定獲得のしやすさ、企業応募の手法の変遷について深掘りしていきます。
各世代の特徴
しらけ世代
1960年代には学生運動が活発でしたが、その後は政治への無関心が顕著になりました。この世代の大学進学率は低く、多くの人が中卒や高卒で就職を選んでいました。いわゆる「金の卵」として評価されていました。
バブル世代
1980年代後半のバブル経済に生まれた世代で、大企業は大量に新卒を採用しました。この時期、大卒者は一気に就職先を確保することができ、「超売り手市場」と称されました。
氷河期世代
1970年~1982年生まれの「ロスジェネ世代」とも呼ばれるこの世代は、バブル崩壊による経済の冷え込みに直面しました。採用意欲は低下し、就職市場は厳しい状況に突入しました。
プレッシャー世代
1983年~1987年生まれで、リストラや不況の波が押し寄せ、就職活動へのプレッシャーが高まりました。企業倒産が相次ぎ、新卒の採用がシビアになりました。
ゆとり・さとり世代
2000年代後半には一時的な景気回復が見られましたが、その後の金融危機や東日本大震災の影響で再び厳しい状況に直面しました。しかし、2016年頃からは再び売り手市場に向かう兆しが見えてきました。
内定獲得のしやすさ
調査によると、内定獲得のしやすさではしらけ世代が最高評価を受けています。具体的には、内定しやすさ指数はしらけ世代を1とすると氷河期世代の4.1倍の差があると推定されています。。
氷河期世代は、インターネットの普及に伴い、就職ナビサイトを活用できるようになったものの、企業の募集枠が減少したため、応募社数は増え続けました。この世代では、平均14.26社に応募したと報告されています。
応募企業探しの手法の変遷
- - しらけ世代:大学のキャリアセンターを利用した割合が高く、直接企業を訪問して情報を得ることが一般的でした。
- - バブル世代:大量採用の流れにより、ハガキでの情報取り寄せが増加し、パンフレットを通じての情報収集が多くなりました。
- - 氷河期世代以降:デジタルメディアの普及に伴い、就職ナビサイトの利用が進みました。特にプレッシャー世代ではその使用率が67.6%まで上昇します。
近年では、エージェントを利用する「ゆとり・さとり世代」の動きも見られ、30.2%がこの手法を選んでいます。
選考過程の変遷
選考試験において、特に氷河期世代の時にエントリーシートが普及し始めました。その後、情報技術の進歩と共に、WEBでの受け付けが可能になり、ゆとり・さとり世代では84.9%がWEB適性検査を経験しています。新しい選考方法として動画面接や360度評価が採用され、企業は選考におけるミスマッチを回避したいと考えています。
グループディスカッションの変遷
グループディスカッション自体は、バブル世代から浸透し始め、氷河期世代では79.2%、プレッシャー世代では81%が経験していることがわかります。この中で求められる要素も変化し、「チームワーク」が最も重視される傾向になっています。
差別の実感
最後に、世代間での差別に対する意識も注目されます。特にゆとり・さとり世代では、男女差別や学歴差別を感じている比率が高くなっており、今後の採用環境の見直しが求められます。そのため、より公正な選考方法の導入が重要であると考えられます。
まとめ
新卒採用の変遷は、社会経済の状態と深く結びついています。それぞれの世代が抱える課題や意識の違いを理解することで、今後の採用活動をより効果的に進めていくための指針となるでしょう。