国立科学博物館が解き明かした花の臭みの進化
国立科学博物館の奥山雄大氏と、他の関連機関との共同研究が、花から発せられる強烈な臭いの進化の秘密を明らかにしました。
この研究では、特に腐肉擬態花と呼ばれる花が、どのようにして腐った肉のような臭いを作り出し、昆虫を引き寄せているのかが詳細に調査されました。
腐肉擬態花とは?
腐肉擬態花は、昆虫をだますために腐った肉のような強い臭いを放つ花のことです。これらの花は、花粉を運ぶ昆虫を誘き寄せるために、わざわざそのような匂いを発する特異な進化を遂げてきました。
特に注目されたのは、カンアオイ属の花です。
研究の成果
研究チームは、ジメチルジスルフィド(DMDS)という臭い成分が、カンアオイ属の一部の種類の花から発せられることを解明。さらに、これを生み出すための酵素「ジスルフィドシンターゼ(DSS)」を特定しました。この酵素は、進化の過程で遺伝子のわずかな変化により独立に発展したことが示されています。
始まりはアミノ酸の変化
研究によると、陸上植物が共通して持つメタンチオールオキシダーゼという酵素が、アミノ酸の配列の変化を経てDSSへと進化することが分かりました。この発見は、花がどうしてこのような独特な機能を持つに至ったのかを示す重要な情報となります。
自然界における重要性
腐肉擬態花の存在は、花の進化を理解する上で興味深い事例となります。これらの花は、特異な臭いによって特定の昆虫を引き寄せ、受粉を助けるという重要な生態系内の役割を持っています。調査では、カンアオイの多様な種類において、この臭いを生成する能力が確認されました。研究はまた、植物園の生物多様性が科学的発見に寄与することを示しています。
今後の課題
この研究の成果は、なぜ花が腐肉のような臭いを発するのかという基本的なメカニズムや、他の生物が同様の香りを発する理由の解明につながることが期待されています。今後、研究チームは他の臭いを持つ植物についても調査を進め、生物が「仕掛けた臭い」をどのように作り出すのかをより深く探求する意向です。
本研究は、我が国の豊かな生物多様性が新たな科学的知見を生む基盤であることを明らかにしました。筑波実験植物園の役割が今後も重要となるでしょう。