家庭医療の新たな価値と医療ニーズの発見
医療法人社団やまとが行った研究により、家庭医療クリニックが地域医療にもたらす価値が明らかになりました。特に、医療資源が豊富な地域においても、未だ見落とされている医療ニーズが存在することが示されています。この研究は「Addressing healthcare needs in an inaugural family medicine clinic in a core city in Japan: Mixed-methods research」と題され、2025年3月21日に日本プライマリ・ケア連合学会の英文誌に受理されました。
やまと診療所高知の概要
やまと診療所高知は、高知市吉田町に位置し、2023年10月に開院しました。このクリニックは、地域の患者に対して、小児から高齢者まで幅広く医療相談を受け付けることをモットーにしています。先日、最新の研究において、家庭医療クリニックが地域社会における潜在的な医療ニーズを発見する能力を有していることが報告され、医療の質向上に寄与することが期待されています。
研究の背景と目的
この研究では、家庭医療クリニックが新しい医療ニーズをどのように発見するかを探求しました。調査の結果、高知市における家庭医療クリニックの立ち上げによって、従来の医療システムでは見逃されやすい、患者の健康問題や社会的ニーズが顕在化しました。具体的には、精神的なサポートが必要な患者や、感染症のリスクを抱える高齢者などのニーズが新たに認識されました。
研究内容の詳細
水本潤希医師が主導したこの研究では、やまと診療所高知を訪れた外来患者1,327名の診療データを分析しました。この中で、新たに確認された医療ニーズは156件に上り、患者の年齢は33歳から94歳の範囲でした。これらの患者は、疾患の見落とし、適切な薬剤管理の不備、社会的孤立、家族に関する環境問題など、複雑な健康状態やニーズを有していました。連携した医療スタッフは、そうした患者の背景に対して、細やかな観察と理解を持って接することが重要であることを示しました。
家庭医療の意義
この研究は、家庭医療がもたらす価値を科学的に証明し、医療ニーズを可視化する重要な試みでした。家庭医は地域特有の健康問題や社会的な課題に対処するため、日々の診療を通じて得た経験を基に研究を進めていくべきであるとの見解が示されました。家庭医療のモデルが地域医療にもたらす可能性を広く考える上で、この研究は重要な指標となるでしょう。
今後の展望
今後の研究においては、家庭医がより調査や研究活動に参加しやすい環境を整えることが求められます。特に、家庭医療専門の育成プログラムや地域の大学との連携を強化し、家庭医療クリニックが地域に与える影響を長期的に評価するべく、新たな研究活動が期待されています。院長の西村真紀は、地域医療の現場での経験をもとに、家庭医が研究者と連携して地域の医療ニーズに取り組むことの必要性を強調しています。
おわりに
家庭医は、地域住民が直面する多様な健康問題に対処し、新たな医療モデルを確立する役割を担っています。やまと診療所高知の取り組みは、今後の地域医療の発展につながる重要な一歩であり、家庭医療の重要性がますます認識されることでしょう。今日の医療ニーズに応えるため、家庭医療はまさに必要不可欠な存在です。
参考文献