月面のイルメナイト推定技術の進展
このたび、国立研究開発法人産業技術総合研究所の松岡萌研究員と山本聡研究グループ長は、月面におけるイルメナイト(FeTiO3、チタン鉄鉱)の含有量をより正確に推定するためのデータ基盤を整備しました。この研究は、月資源開発の新たな可能性を広げるものとして期待されています。
イルメナイトの重要性と存在の偏り
イルメナイトは、水、酸素、鉄、チタンなどの重要な資源を月面から得るための材料として位置づけられていますが、その存在場所には偏りがあると言われています。このため、イルメナイトの詳細な分布を明らかにすることは、月面基地建設や資源開発において非常に重要です。
リモートセンシングによる反射スペクトルデータ解析
リモートセンシング技術を用いて得られた反射スペクトルデータは、月面のイルメナイト分布を探るための強力なツールとなります。しかし、他の鉱物との混合比率によってイルメナイトのスペクトルが変化するため、従来の手法では正確な推定が難しかったのです。これに着目し、松岡研究員たちは新たな混合実験を行いました。
月面環境を再現した実験
彼らは、月面のレゴリスを模した試料を作成し、最小で1%以下の質量比でイルメナイトと輝石を混合しました。この混合比を変化させ、最大25段階の反射スペクトルデータを取得することで、イルメナイトを含む混合物の分光特性が明らかにされました。これにより、月面探査衛星からのデータを用いた新たな解析指標が確立されました。
新たな分析技術で精度向上
今回の研究では、イルメナイトと輝石の比率をコントロールすることによって、イルメナイトの暗化特性やスペクトルの変化が定量的に解明されました。特に紫外域のスペクトル形状とイルメナイト量との良好な相関が示され、これまでの可視・近赤外データだけでは難しかったイルメナイトの正確な推定が可能になることが示されました。
未来の資源開発に向けて
近年、月は国際的な宇宙探査の中心として注目を集めています。この研究は、月の資源開発において重要な基盤を提供するものであり、今後他の鉱物との実験も行う予定です。これにより、月面の具体的な採掘候補地点の特定に向けた道が開かれることでしょう。
論文情報
この研究の詳細は、2026年2月24日に「The Planetary Science Journal」に掲載予定です。論文タイトルは、「UV-Vis-NIR reflectance spectra of ilmenite mixtures: Implications for estimation of TiO2 content in lunar mare regions」です。著者は松岡萌と山本聡で、研究成果は月面資源開発の進展に貢献すると期待されています。