IOWN APNを活用した生放送音声リモートプロダクションの実現
日本の放送業界では、より高品質で効率的な音声制作が求められています。このたび、NTT、NTT東日本、TBSテレビが共同で、世界初となるIOWN APNを利用した音声リモートプロダクションを成功させました。これは、年末の音楽番組「輝く!日本レコード大賞」で実施され、その成果が注目を集めています。
リモートプロダクションという新手法
映像・音声のプロダクションにおいて、リモートプロダクションは近年、業務効率化や高品質化を進める手段として注目されています。従来の手法では、多くの機材やスタッフを現地に派遣する必要があり、コストや人手が課題でした。しかし、リモートプロダクションを採用することで、制作拠点と撮影現場をネットワークで接続し、効率的な制作が可能になります。
特に、人口減少に伴う技術者不足が懸念される中、リモートプロダクションの導入は重要な解決策とされています。
IOWN APNによる低遅延と高品質な音声伝送
今回の実施にあたり、TBSの赤坂スタジオサブと新国立劇場をIOWN APNで接続しました。APNは、超低遅延で高品質な音声伝送を実現するために設計されています。音声信号や各種制御信号をリアルタイムで送信することで、放送現場において高い音質を確保しつつ、制作環境を効率化しました。
例えば、音声制作は多くのチャネルに対応可能で、従来のネットワークでは難しかった生放送音楽番組においても、高安定性を維持しつつ、わずか5ms未満の遅延で実現しています。
「輝く!日本レコード大賞」での成功事例
具体的には、TBSは「輝く!日本レコード大賞」の制作において、赤坂スタジオサブから音声素材のリアルタイム伝送を行いました。この手法により、音声調整などを現地要求に基づいて効率よく行うことができ、最後の生放送では、現地の中継車ともシームレスに連携させることができました。
今後の展望と業界への貢献
このプロジェクトはNTT、NTT東日本、TBSの三社が協力し実施しました。各社が持つ強みを活かし、映像・音声制作の向上に貢献しています。NTTは設計技術支援を担当し、NTT東日本はAPNの商用提供を行いました。また、TBSは音声設備の提供と運用を通じて番組制作に参加しました。
今後さらにこの技術を他の放送局にも展開し、映像・音声制作業界全体のDXの促進を図る方針です。リモートプロダクションの普及によって、制作の効率化や質の向上を目指し、番組制作の新たな可能性を切り開いていくことでしょう。
用語解説
- - IOWN: Innovative Optical and Wireless Network。光を中心とした革新的技術を活用した、高速・大容量通信の基盤。
- - APN: All-Photonics Network。すべての通信にフォトニクス技術を導入し、低消費電力、高品質、低遅延を実現します。
- - Dante: プロ音声業界で使用される音声データ伝送のためのネットワーク技術。
これにより、音楽番組制作の新しい時代が幕を開け、さらなる発展が期待されます。