大規模災害時の迅速な情報共有に向けて - 民間データ公開の社会実験開始
近年、日本では自然災害の増加と激甚化が深刻な問題となっています。迅速な対応が求められる中、ドローンや人工知能などの技術革新により、災害支援の可能性は広がっています。しかし、災害時に役立つデータを保有する民間企業が多く存在する一方で、それらのデータを効果的に活用する仕組みは十分に整備されていませんでした。
この課題解決に向け、東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)と一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)は、2019年から産官学連携で「民間事業者によるリアルタイム災害情報提供研究会」を立ち上げ、民間企業が保有するリアルタイムデータの迅速な収集・共有システムの構築に取り組んできました。
2023年には、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題「スマート防災ネットワークの構築」において採択されたサブ課題A「災害情報の広域かつ瞬時把握・共有」の共同研究開発機関として、評価・検証用プラットフォームの構築を開始しました。
本社会実験では、このプラットフォームを活用し、大規模災害発生時に民間企業から提供されるデータを迅速に公開することで、被害状況の把握を加速させ、効果的な救助・復旧活動に貢献することを目指しています。
24時間以内のデータ提供で迅速な対応を実現
社会実験では、ドコモ、パイオニア、三井住友海上保険など、様々な企業が参加し、人口統計情報、車両通行量、ドライブレコーダー画像などのデータを24時間以内に提供します。
提供されるデータは、災害発生後1週間から1か月程度、研究会メンバーや関係機関に限定して公開され、災害対策や復興支援に活用されます。
データ提供の仕組みと倫理
データ提供は企業の自主的な判断で行われ、義務付けられていません。データ提供があった場合、契約に基づいて対価が支払われます。プライバシー保護やセキュリティー対策など、データ利活用における倫理的な側面についても、慎重に検討されています。
社会実験の開始時期と対象
社会実験は、7月12日以降、県域範囲で被害が及ぶような災害が発生した場合に開始されます。具体的な情報提供開始時期は、AIGIDが状況を判断して決定します。
未来に向けた取り組み
本社会実験は、民間データの活用による災害対応の効率化に向けた重要な一歩です。今後も、データ提供企業の増加やデータ利活用範囲の拡大を進め、より効果的な災害対策体制の構築を目指していく予定です。
民間企業と連携したデータ共有の取り組みは、災害発生時の迅速な対応と復旧を加速させるだけでなく、防災意識の向上にも貢献する可能性を秘めています。