ウクライナのナショナリズムを追う──独立の歴史とその課題

ウクライナ・ナショナリズムの深層に迫る

中井和夫著『ウクライナ・ナショナリズム――独立のディレンマ』は、1991年の独立以降のウクライナの複雑なナショナリズムを深く掘り下げた作品です。著者は、ウクライナが直面する歴史的背景と政治的葛藤を紐解き、独立国としてのアイデンティティ形成の過程を描き出します。

本書の内容概要

本書は、以下のような主要な目次構成で、ウクライナのナショナリズムの歴史とその特質を解明しています。

1. ナショナリズムの現在 - 現代のウクライナにおけるナショナリズムの現状を論じます。
2. ウクライナ化を求める運動 - 1960年代からペレストロイカにかけての運動を詳しく掘り下げます。
3. 独立へ - ソ連からの独立への道のりを解説し、その過程を詳細に追います。
4. 独立のディレンマ - 独立後に直面するさまざまな課題を分析します。
5. 民族関係論への展望 - 最後にウクライナの未来に向けた展望を示します。

著者の専門性

中井和夫氏は、1948年生まれで、東京大学名誉教授として数十年にわたりウクライナ研究を進めてきました。彼の著作は、ソ連時代の民族政策やウクライナの歴史的課題をタイムリーに取り上げ、学界で高い評価を受けています。この作品も、彼の豊富な知識と経験に基づいて、更なるダイナミズムをもたらしています。

本書を推薦する声も多く、東京大学名誉教授・塩川伸明氏は「今日の情勢の背景を知る上で必読の書」と評しています。著者の深い洞察は、ウクライナのナショナリズムを理解する上で欠かせないものとなっています。

独立後のディレンマ

ウクライナのナショナリズムは、独立後も現代に至るまでさまざまな側面を持っています。独立以前には、ロシアや周辺国との複雑な関係性が存在し、その影響を受けながらも独自のアイデンティティを形成してきました。しかし、独立以降はそのアイデンティティをどう守り、どのように発展させるべきかという課題に直面しています。

政治的には、ウクライナはEUとロシアの狭間で揺れ動いており、ナショナリズムの強まりが内外の紛争を引き起こす要因にもなっています。中井氏はこれを「独立のディレンマ」と名付け、理解を促します。ウクライナのナショナリズムを単なる感情ではなく、現実的な問題として捉えるべきだと強調しています。

まとめ

『ウクライナ・ナショナリズム――独立のディレンマ』は、歴史的、政治的、文化的な側面からウクライナのナショナリズムの切実な課題を取り上げた作品です。ウクライナの過去と現在を深く知りたい人にとって、必読の一冊となるでしょう。この本を通じて、ウクライナのナショナリズムが持つ多様な側面とその影響をぜひ探求してください。