ノーコードAIを用いた製造業の未来に迫る
愛知県名古屋市に本社を構えるAIベンチャー、株式会社トライエッティング(以下、トライエッティング)が、大径薄肉パイプ専業メーカーのシンニチ工業株式会社(以下、シンニチ工業)との共同実証実験を開始しました。この実験は、ノーコード予測AIプラットフォーム「UMWELT」を用いて製造工程における良品率を向上させることを目的としています。2024年の10月から12月にかけて行われるこの取り組みは、製造業の現場でのデジタル化と効率化を促進する重要なステップといえるでしょう。
社会情勢が影響する製造業の課題
近年、世界的な原材料価格の高騰が製造業に与える影響が深刻になっています。2023年度の調査によると、製造事業者の91.9%が原材料費の高騰を事業への影響として挙げ、この課題に対処するためのコスト削減を求める声が多く聞かれます。特に、シンニチ工業はその売上に対する原材料費の比重が高く、製造工程での不良品発生を改善せざるを得ない状況でした。
そのため、これまでデータ活用が不十分だった同社がトライエッティングのAI技術に期待を寄せ、実証実験に至ったのです。さらに、トライエッティングとシンニチ工業は、MUFGが主催するスタートアップとのマッチングイベントで出会い、共に課題解決を目指す関係が築かれました。
実証実験の詳細と期待
実証実験は、トライエッティングのノーコードAIプラットフォーム「UMWELT」のアルゴリズムを使って、不良品発生の原因を解析し、良品率を向上させる可能性を探ります。詳しくは、製造条件や歩留まりなどのデータを学習させることで、どのような条件で良品が増えるのか、および不良が発生しやすい条件を特定します。
シンニチ工業の製造部担当次長、常岡邦啓氏はこの実証実験の成果に期待を寄せ、製造工程の改善を通じてノーコードAIが同社の新たなビジネスモデルの礎となることを願っています。また、トライエッティングの代表である長江祐樹氏も、シンニチ工業の課題解決を共に目指すことを喜びに思い、業界全体への貢献を目指すと語っています。
ノーコードAIプラットフォーム「UMWELT」の特徴
トライエッティングの「UMWELT」は、AIモデリング、データの前処理、実装・システム結合がノーコードで行えるプラットフォームです。このプラットフォームを活用することで、製造現場は複雑なデータ解析を迅速かつ正確に行うことが可能となり、結果的に業務の効率化を実現できます。
具体的には、機械学習や需要予測、組合せ最適化といった多様な機能を持ち、データの前処理も自動化されるため、従来の手間が大幅に削減されます。さらに、解析結果は日常的に使用されるExcelファイルに結合され、スムーズな導入が可能となります。
結論
トライエッティングとシンニチ工業の共同実証実験は、製造業のデジタル化を加速し、原材料価格の高騰によるコスト問題への一つの解決策を提供するものです。また、こうした革新が業界全体に波及し、製造業のさらなる発展につながることが期待されます。今後も、AI技術がどのように製造業に変革をもたらすのか、引き続き注目していきたいと思います。