潰瘍性大腸炎とクローン病の有病者数が増加
最近、東邦大学や杏林大学、大阪公立大学が中心となって実施された全国的な疫学調査の結果、潰瘍性大腸炎とクローン病の有病者数が2015年の調査から8年を経て約1.4倍に増加したことが報告されました。新しいデータによると、2023年の潰瘍性大腸炎の患者数は約31.7万人、クローン病は約9.6万人と推計されています。
本研究の焦点は、軽症者や受給者証を持たない患者を含めた日本全国の疾病負担を把握し、医療政策の基盤を築くことにあります。この調査結果は、今後の診療体制や医療政策に大きな影響を与えると期待されています。
調査の背景
潰瘍性大腸炎とクローン病は、日本では繰り返し再燃と寛解を繰り返す難治性の炎症性腸疾患です。これらの疾患の発生率は、1991年と2015年の調査でも増加していることが確認されており、特に2015年の調査では潰瘍性大腸炎が約22万人、クローン病が約7.1万人に達していました。このように、病気の有病率が年々上昇する中、今回の調査は重要な役割を果たしました。
調査方法
研究チームは全国の病院に対し、内科や外科などの診療科から無作為に選ばれた3,583の診療科を調査対象とし、2023年に受診した患者の数を集計しました。最終的に1,798の診療科から回答を得て、潰瘍性大腸炎の推定患者数は316,900人、クローン病は95,700人と算出されました。これは人口10万人あたり、潰瘍性大腸炎が254.8人、クローン病が77.0人に相当します。
増加の理由
研究者によると、潰瘍性大腸炎やクローン病の患者数は日本国内で一向に増加している傾向が確認されています。この増加の背後には、生活習慣の変化や環境要因、医療技術の向上による早期発見の増加などが考えられています。また、より多くの人が診断を受けるようになり、医療を受けられるようになったことも影響しているとされています。
医療政策への影響
この研究は、日本における潰瘍性大腸炎とクローン病の疾病負担を把握するための貴重なデータを提供しており、今後の医療政策や診療体制の整備に資するものと期待されています。持続的な疫学調査を通じ、患者数の変化を把握することで、診断や治療、予防に向けた施策がより効果的に進められることでしょう。
今後の課題
この研究の成果を基に、引き続き全国規模の調査が必要とされており、確実に有病者数を把握するための取り組みが求められています。今後も日本国内における潰瘍性大腸炎やクローン病の患者の実態を把握することが急務です。これにより、疾患に対する理解を深め、さらなる医療政策に反映させることが期待されます。
本研究の成果は、2025年9月2日付けで「Journal of Gastroenterology」で発表されており、著者には東邦大学や杏林大学、大阪公立大学の研究者が名を連ねています。この成果によって、日本における負担の実態が詳細に示されたことから、さらなる研究と政策への反映が進むことが期待されています。