西之島の植生消失
2025-07-29 14:07:55

西之島の噴火による植生消失と遺伝的解明の新発見

西之島の植物群落消失とその遺伝的起源



東京都立大学大学院理学研究科の髙山浩司教授を中心に、京都大学の中野智之准教授と野田博士特定助教を含む研究チームが注目すべき結果を発表しました。それは、小笠原諸島の西之島でかつて栄えていたスベリヒユ(Portulaca oleracea)の遺伝的特徴を分析し、この個体群が他の島から由来していることを解明したというものです。西之島の植物は火山活動により姿を消しましたが、その背景には興味深い生態系形成過程が隠されていました。

研究の経緯と成果



西之島は、父島の西北西約130キロメートルに位置し、近年の火山活動により植生は完全に消失しました。この島は周囲に他の陸地がほとんどなく、植物の定着や生存競争のプロセスが自然条件下で観察できる特異な環境です。研究チームは、2019年に行った調査で採取したスベリヒユの標本を使い、他地域の個体群との遺伝的比較を徹底的に行いました。

その結果、西之島のスベリヒユは父島の個体群と最も遺伝的に近縁であることが分かりましたが、同時に独特な遺伝的特徴も持っていることが判明しました。これにより、少数の種子によって定着し、自然環境の変化が遺伝的構成に影響を与えた可能性が指摘されました。

創始者効果と遺伝的浮動



研究では、創始者効果と遺伝的浮動が鍵となる要素として浮かび上がりました。創始者効果は、ごく少数の個体が新しい場所に移動し、その遺伝子が集団全体の特徴を反映しないために、新たな集団の遺伝的性質が偏る現象を指します。遺伝的浮動は、偶然によって集団内の遺伝子頻度が変化することを説明し、特に小さな集団においては顕著に見られる現象です。

分子遺伝学の手法



本研究では、葉緑体ゲノムの塩基配列や核ゲノム全体の一塩基多型解析が用いられました。これにより、西之島の植生が父島由来であること、また独自の遺伝的特徴を持つことを科学的に裏付けることができました。加えて、小笠原諸島全体で見たときに、2回以上の種子移入があった可能性も示唆されています。

研究の意義と今後の展望



本研究の成果は、火山活動によって完全に植生が消失した西之島における過去の植物群落の成立過程を遺伝的に解明する重要な一歩です。今後も西之島における植生の再定着や回復を追跡するために、今回得られたデータは貴重な基礎資料として位置付けられることでしょう。実験的な自然環境を通して、より広範な生態系の理解に寄与することが期待されています。

まとめ



西之島でのスベリヒユに関する遺伝的解析は、植生の起源と成立過程の解明に寄与し、さらには海洋島における生態系形成のメカニズムについても新たな知見を提供しています。植物がいない現在の西之島において、過去のデータをもとにどのような環境が築かれていたのかを探求していくことが、今後の研究課題となるでしょう。


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