東京大学が示した腸内細菌と自己炎症性疾患との関連性
2025年5月6日、東京大学医科学研究所において、腸内細菌が引き起こす疾患に関する重要な研究成果が発表されました。この研究は、東京大学のワクチン科学分野の石井健教授を中心に、国内外の数多くの研究機関からなる国際共同研究チームによって行われました。
研究の背景と概要
本研究は、腸内細菌がセカンドメッセンジャーとして放出する環状核酸(CDN)が、自己炎症性疾患(SAVI)や自己免疫疾患(SLE)の悪化に寄与することを明らかにしました。腸内環境は、我々の健康状態に大きな影響を与えることが知られていますが、これまでの研究でも腸内細菌と様々な疾患との関連性が指摘されてきました。
具体的な研究成果
SAVIモデルマウスでの実験では、下痢を引き起こすと体内でCDNが全身的に放出され、疾患の症状が悪化することが確認されました。この結果は、腸内細菌の変化が自己炎症性疾患の進行にどのように影響を及ぼすかを示唆するものであり、腸内細菌が持つ生理的役割の重要性を再認識させます。
さらに、抗生物質を投与して腸内細菌の活動を抑制すると、CDNの生成が減少し、全身の炎症が緩和されることが分かりました。これにより、腸内細菌が持つポジティブな役割とともに、疾患進行に対するリスク要因であることが示されています。
CDNの潜在的な意義
SAVIおよびSLEの患者から採取した血液サンプルの分析では、血中のCDN濃度が病態の進行と相関することが確認されました。このことから、CDNが新しい疾患マーカーとして利用できる可能性が示唆され、さらなる研究が期待されます。
これにより、腸内細菌との関連がある疾患に対する新たな治療戦略が開発される可能性があることは、医療における革新的な一歩として注目されています。
研究チームの背景
この研究は東京大学医科学研究所のほか、大阪大学や広島大学、さらにはトルコやオランダ、スウェーデンの研究機関からも参加者が集まり、国際的な協力のもとに実施されました。この多国籍のチームによって、幅広い知見が集められ、より正確な分析が行われています。
今後の展望
この成果は、腸内細菌が持つ多様な機能を更に探求するための重要なデータとなります。今後も追加の研究が続けられ、腸内環境を改善することで、自己炎症性疾患に対する新しいアプローチが確立されることが期待されています。患者さんにとっては、より効果的な治療法の選択肢が増えることになります。
詳細な情報は、東京大学医科学研究所の
公式ウェブサイトで確認できます。