新たに発見されたβ-1,2-グルカナーゼ群が解き明かす分子進化の新しい視点

新たに発見された新規β-1,2-グルカナーゼの酵素群

東京理科大学の研究者たちが、糖質加水分解酵素（GH）であるβ-1,2-グルカナーゼの新たな酵素群を発見しました。これは、アミノ酸配列の網羅的な相同性検索を通じて実現したもので、機能が未知でありながらも系統的に新しい4つのグループ（Group 1～4）が特定されています。中でも、Group 1～3についてはβ-1,2-グルカンを効果的に分解する活性が確認され、新規GHファミリーGH192、GH193、GH194が創設される運びとなりました。

研究の背景と目的

β-1,2-グルカンは、細菌によって生成される天然のグルコースポリマーであり、宿主免疫系の調節や生理的な役割が知られています。しかし、この酵素に関する研究は限られており、その全体像を把握するには、更なる調査が必要です。これに応じ、東京理科大学の共同研究チームは、新たな酵素を探索することを目的として相同性検索と構造解析を行いました。

研究方法

本研究では、Chitinophaga pinensis由来のSGL（CpSGL）とTalaromyces funiculosus由来のSGL（TfSGL）を用いて、同定したβ-1,2-グルカナーゼの相同性検索を行いました。これにより、全く新しいグループである4つの酵素が発見されました。Group 1～3の酵素がβ-1,2-グルカンを特異に分解することが証明されましたが、Group 4に関しては未だ基質が特定されておらず、さらなる研究が求められています。

酵素の特徴

Group 1～3の酵素の反応速度論的解析の結果、これらはGHファミリーの特性を持ちながらも明らかな違いが見られました。特に、各グループの酵素は最適な反応環境が異なるため、糖鎖の分解パターンや条件に対する適応性が確認されています。また、構造的には(α/α)6バレル構造を持ち、近似した全体構造を有するものの、特有のアミノ酸残基が新たな進化的適応を示しています。

研究成果の意義

本研究によって創設された新たなGHファミリーは、今後の酵素反応メカニズムの解明や新しいオリゴ糖の合成に必要な酵素機能改変に応用されることが期待されています。

中島准教授は、「糖鎖の構造は非常に多様で複雑ですが、新たな分解酵素の発見がそれを解明する手助けになると考えています。」と述べ、今後の研究への期待を語りました。

本研究成果は、2025年5月24日に国際学術誌『Protein Science』にオンライン掲載され、科学界に大きなインパクトを与えることになりました。今後の多方面への展開が楽しみです。