シニアエンジニアのAIスキル学習状況
株式会社モロが行った調査によると、40〜60代のITエンジニアたちの中で、企業が実施するAI関連の研修制度が56%の人から「存在しない」との回答を得ました。一方で、約9割がAIを学ぶ意欲を示すなど、高い関心が伺えます。しかし、その意欲とは裏腹に、実際に学ぶ環境が整備されていない実態が浮き彫りとなっています。
調査結果の概要
調査には600名のITエンジニアが参加し、結果は以下の通りです。
- - 企業のAI研修なしが56%:調査対象者の過半数が所属企業にAI研修がないと回答しました。また、制度がある場合でも、研修が若手中心でシニアエンジニアが対象外のケースが数多く存在しています。
- - 学習時間の不足:AI学習に関する課題として、時間不足が最も多くの割合を占め(31%)、他にも費用や実践の場がないことが挙げられています。
- - 自己投資:過去一年間にAI関連の研修・講座を受講した割合は約30%で、その中で自己投資を行ったのが22%と、有料講座を受けたのはわずか9%です。
このような結果は、シニア層が学ぶ機会を確保できない状態を示しています。この現象は、特にAI技術が急速に発展する中で、技術を維持するための必要なスキルを習得するチャンスが激減しているとも読み取れます。
AI学習意欲の高まりとビジネス環境の乖離
約9割のエンジニアがAIの学習を希望していますが、具体的には以下の結果が報告されました。
- - 積極的に学びたい:31.3%は積極的に学びたいと回答。
- - 先延ばし気味:25.5%は興味がありつつも先延ばしにしているとのこと。
- - 業務上のニーズによって学習:31.8%が必要性を感じた場合に学ぶと回答しています。
このように、多くが学びたい意欲があるものの、実施まで踏み切れない理由として、約31%が「時間がない」と感じ、特にシニア層においてはスケジュールの調整が難しい現状が見受けられます。企業がこのニーズを汲み取らない限り、シニアエンジニア層はますます置き去りにされる運命にあります。
今後の展望と企業の役割
株式会社モロの代表・前田洋平氏は、シニアエンジニアの経験と意欲を活用しつつ、企業が必要とする環境整備が今後の課題であると強調します。学習者の意欲を高める環境の構築を企業が推進することで、より良い人材育成が可能になるでしょう。
日本のIT業界は先進技術を扱う一方で、ベテラン層のスキル向上にはまだ課題が残ることが分かりました。シニアエンジニアを育成し、社会全体の技術力を高めていくためには、彼らに適した研修環境構築が急務です。
参照情報
北海道から沖縄まで、多くの地域でITエンジニアが活躍する現在、各企業がどのようにシニア人材を育成するかが問われています。それが日本全体の競争力を高める鍵となることでしょう。