住友ベークライトと東北大学の新たな挑戦
住友ベークライト株式会社と国立大学法人東北大学は、2025年1月1日に『住友ベークライト×東北大学 次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所』を設立することを発表しました。この研究所は、パワーモジュールやデバイス、AI関連技術に関する素材やプロセスの研究を一貫して行い、社会へ新たな価値を提供することを目的としています。
研究所設立の背景
次世代のパワー半導体やAI関連デバイスが求められる中、高速通信や熱マネジメント、省エネの観点においてますます高度な機能が要求されています。住友ベークライトは、これに対応するために、次世代半導体の研究開発を進める必要があると考え、東北大学との共同研究を決定しました。
研究の目的
1.
高度な機能を実現する素材開発
住友ベークライトの半導体用素材技術と、東北大学の次世代半導体デバイス技術を組み合わせて、革新的な素材やプロセス、評価技術の開発を目指します。
2.
チップレット集積技術の進化
半導体チップレットの三次元集積技術を発展させ、次世代パッケージが求める設計自由度と生産性を向上させるために、共同で研究を行います。
3.
人材育成の強化
半導体技術に精通した次世代の研究者を育成するため、知識や技術の修得を通じて、社会実装に向けた人材を積極的に育成します。
共同研究の具体的な内容
1. 次世代パワーモジュールの研究
住友ベークライトは、パワーモジュールの性能向上に向けて、同社が持つ高機能樹脂や熱伝導絶縁樹脂シートなどを活用し、これまでのセラミック製絶縁材の代替品を開発します。これにより、放熱性を高め、熱膨張のミスマッチを低減し、より組立やすいデバイスの実現を目指します。
2. 提供される技術の活用
住友ベークライトは、自社のエポキシ樹脂成形材料や感光性材料を用い、次世代半導体パッケージ技術を推進します。市場動向に則した新たな技術を確立し、特に生成AI関連技術向けの半導体デバイスに貢献します。
3. 部門横断的な取り組み
新たなパワー半導体チップの開発に向けて、シリコンや窒化ガリウムなどを超える未来の同芯技術を模索し、知見を共有します。特に、酸化ガリウムやダイヤモンド素材の開発を通じて、これまでにない小型で高機能なデバイスを提案していきます。
4. 人材育成の施策
ナノテラスと呼ばれる高輝度放射光施設を活用し、各種有機界面の性能評価や可視化を行います。これにより、次世代研究者の実践的な技術力を育む場を提供し、若手研究者が活躍できる環境を整えます。
組織体制
この共創研究所は、住友ベークライト株式会社の特任教授である久保山俊治氏が運営総括責任者を務め、東北大学の髙橋良和教授が運営支援責任者となります。それぞれの強みを生かし、部門間の連携を強化し、半導体領域における新たな研究テーマを追求していきます。
今後の展望
この共同研究所は、2025年から2028年までの間、東北大学青葉山キャンパスに設置され、次世代半導体の発展に向けて多角的な活動を展開します。そして、持続可能な社会の実現に向けて、新たな技術革新を実現するための重要な拠点となることでしょう。