新たなベンチ研究プロジェクトについて
フクビ化学工業株式会社は、早稲田大学人間科学部佐野友紀研究室とともに、2023年度より新たな研究プロジェクトを開始しました。研究の目的は、居心地の良いベンチの設計と、それが人々の行動に与える影響を探ることです。2024年度には、歩行者空間に近い環境での調査を取り入れ、利用者の心理や行動の変化を解明することを目指しています。
ベンチ配置の多様性
近年、屋外空間におけるベンチの役割が注目されています。人々が集う場所としてのベンチ設置は増えており、特に「サードプレイス」としての機能が強調されています。一般的にベンチは通路に平行に配置されることが多いですが、2023年度の研究では、さまざまな配置方法が実験されました。平行配置に加え、通路に対して直角に配置する垂直、2つのベンチを内向きに配置した「ハの字」、斜めに配置した「斜め」の4パターンが設定され、その結果、特に「斜め」の配置が利用者にとって行動に適した選択肢となることが示されました。
2024年度の調査手法
2024年度には、アンケート調査を通じて、利用者の心理的要素に関するデータを収集しました。調査地を田町駅前のペデストリアンデッキに移し、より実践的な空間での実験を行いました。この新たなアプローチにより、どのようなレイアウトが最適であるかを検討し、具体的な利用状況を分析しました。
行動観察の結果
2024年5月13日から22日の間、行動観察が行われ、のべ1,383人のベンチ利用者が対象になりました。結果、平行配置の滞在時間は平均8.24分に対し、垂直は12.33分、斜めは11.16分、ハの字は11.5分でした。このことから、回転配置の方が利用者が長く滞在する傾向があることがわかりました。
また、配置ごとの利用者の行動内容も分析されました。平行配置では荷物を置く行動が多く、垂直配置ではPC作業、斜め利用では筆記、ハの字利用では読書や睡眠が見られました。さらに、利用者は進行方向に近いベンチを好んで利用する傾向がありました。
アンケート調査の結果
アンケートには23名の被験者が参加し、「座りやすさ」について5段階で評価してもらったところ、平行配置が4.25と最も高い評価を得ました。一方で、回転配置の操作においては、壁側のベンチが歩道側よりも長く利用され、視線を気にしない傾向が強いこともわかりました。
これらの結果から、平行配置は短時間の利用に適し、回転配置は長時間の利用が可能であることが示されました。
2025年度の計画
2025年度には、2024年度の調査から得られた知見を基に、歩道側の座席の改善について研究を進めます。たとえば、他者の視線を遮る植栽の配置による変化についても検証し、より快適な公共空間の設計に寄与しようとしています。
フクビ化学工業株式会社は、早稲田大学との共同研究を通じてベンチ設置の効果を定量的かつ学術的に検証し、より良い公共空間の創造に努めています。これは、人々と環境に配慮したまちづくりへの大きな一歩となるでしょう。
参考文献
- - 中村友紀, 宮嶋伯周, 佐野友紀.『歩行者専用道路における壁に接したベンチの平行・回転配置が利用者行動・心理に与える影響その1:ベンチ利用者の行動観察調査』日本建築学会大会学術講演梗概集(九州). 2025. p.501-502
- - 宮嶋伯周, 中村友紀, 佐野友紀.『歩行者専用道路における壁に接したベンチの平行・回転配置が利用者行動・心理に与える影響その2:現地におけるベンチ利用心理評価実験』日本建築学会大会学術講演梗概集(九州). 2025. p.503-504
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