中高生向け素粒子探究活動が大きな成果を達成
最近、加速キッチンが実施してきた「中高生を対象とした素粒子探究活動」が文部科学大臣表彰で科学技術賞(理解増進部門)を受賞しました。この活動は、特に福島原発事故以降、素粒子計測に関心の高まりを背景に行われてきましたが、実際には中高生が素粒子計測を経験する機会は極めて限られていました。これに対抗すべく、加速キッチンは手の届く範囲での科学的な探究の機会を提供しようと立ち上げたのです。
受賞式と活動の背景
令和7年度の授賞式は4月15日に行われ、代表の田中香津生が受賞の喜びを語りました。科学技術賞は、科学に対する知識や理解を深める努力を評価するもので、中高生に素粒子探究の楽しさを伝える重要な取り組みが認められたことに、多くの関係者から期待が寄せられています。
新たな学びの場を提供
加速キッチンは、中高生が自由に使える素粒子検出器を設計し、これまでに国内外で300台以上を配付してきました。特筆すべきは、Discord上での放射線探究オンラインネットワークの構築です。中高生はこのプラットフォームを通じて、大学生のメンターからアドバイスを受けながら、自宅にいながら独創的な研究に取り組めます。
例えば、富士山での宇宙線観測や、気温と宇宙線の関係に関する研究が行われました。また、海外の高校生との共同プロジェクトも実現しており、元気な中高生たちが新しい発見を続けています。
国境を越えたコラボレーション
特に注目すべきは、女子学院高等学校やN高等学校のチームがアメリカの高校生グループと共同で、2024年の太陽フレア減少による宇宙線の変化を探求したことです。このように、加速キッチンの活動は国境を越え、異なる文化の中高生たちが一緒に素粒子探究を行う新しい機会を提供しています。
その一方で、小学生たちも素粒子検出器の組み立てに挑戦し、自作の検出器を開発する例が増えています。豊島岡女子学園の生徒たちは、アクリルブロックを使って手のひらに乗るサイズのチェレンコフ検出器を作成しました。
豊富な探究の機会
これまでの活動は、市民科学や研究機関との連携によって多岐にわたります。古墳観測やニューメキシコ州のLangmuir Laboratoryでの雷ガンマ線観測、さらには東北大学RARISのサイクロトロン加速器を利用した実験など、中高生が様々な探究を実践できる場が整っています。近年は論文発表件数が増え、学術界でも注目されています。
加速キッチンによる活動は2019年以降、中高生たちに論文3件や学会発表108件を達成させ、学会賞も19件受賞するなどの成果を収めています。特に、高校生チーム「Sakura Particles」は日本人として初めてCERNのビームコンテストに採択され、海外で素粒子計測の実験にも挑戦しました。
未来への展望
田中香津生代表は、素粒子に魅了されてからの経験を活かし、今後も多くの中高生に探究の機会を提供する意気込みを示しています。彼女は、「オンライン通じての仲間や研究者とのつながりがあれば、中高生でも素粒子の世界を楽しむことができる」と確信しています。この活動は国内外の研究者や大学生のサポートによって支えられており、今後もさらなる機会の創出に向けて努力していく考えです。
科学技術賞(理解増進部門)について
この科学技術賞は、科学と技術に対する知識や理解を広め、社会全体の科学リテラシー向上に寄与する個人や団体に贈られるものです。このような優れた取り組みが、より多くの人々に科学技術の重要性を実感させる手助けとなることを願っています。加速キッチンは、今後も新しい探究の場を広げ、中高生にとっての素粒子探究の可能性をさらに開かれたものにしていくことでしょう。