バーレーンでの伝統工芸展「From Hand to Hand」開催レポート
2025年2月28日から4月6日までの約1ヶ月間、中東のバーレーンで「From Hand to Hand 〜100-Years-New Craft」をテーマにした伝統工芸展が開催されました。この展覧会はツナガル株式会社の支援を受け、日本の工芸を紹介する貴重な機会となりました。東京を拠点に活動するツナガル社は、日本文化を中東に広めることを目指し、このイベントをサポートしています。
開催概要
この展覧会はバーレーン国立博物館で行われ、最終的に16,747人もの来場者を集め、当初予定されていた会期を延長するほどの人気を博しました。展覧会の企画者、鈴木英恵氏とブドア・スティール氏が進行のもと、参加作家たちによる実演や対話が繰り広げられました。特に、来場者と直接コミュニケーションを取りながら、工芸の持つ哲学を伝える姿勢が印象的でした。
展出作家には、歴史ある工房から現代に至るまでの職人たちが参加しています。たとえば、朝日焼の松林豊斎氏や、開化堂の八木隆裕氏、上出長右衛門窯の上出惠悟氏などが名を連ね、各々が自身の技術や作品の背景について、熱心に語りかけました。
日本の工芸が持つ力
この展示では、工芸が単なるアートやデザインとしてではなく、「生活の道具」としての重要性が強調されました。八木氏は「私が学んだことは言葉ではなく、耳で聞くことだ」と語り、工芸が持つ生きた伝統の継承を強調しました。上出氏は「自らの持つ技術が芸術やデザインを超えたものである」と述べ、九谷焼の美しさを新たな形で発信しました。
また、中川木工芸の中川周士氏は、かつて250軒あった桶屋が現在では3軒に減少している現実を踏まえ、新しい形を模索し続ける重要性を強調しました。彼は桶づくりの香りを来場者に配布し、木に対する愛情を直接感じてもらうことで、感覚を通じた工芸の体験を提供しました。
異文化交流の場としての工芸
金網つじの辻徹氏は、バーレーンの文化と日本の器の違いについて話し、共通の「器」による食文化の交差が異文化理解を生む重要性を訴えました。このように、工芸はただ価値を持つものではなく、人々を繋ぐ架け橋としての役割も担っているのです。
バーレーンの文化と共鳴し合いながら、工芸の未来を展望するこの展示は、多くの人々に強いメッセージを与えました。松林氏は、バーレーンの伝統文化が今まさに形成されつつあると感じているそうです。
工芸による未来の創造
さらに、展示が続く中で、バーレーンのクラフトセンターやスークを訪れ、現地職人との交流も行いました。これによって、様々な地域の手作り文化が共鳴し、互いに学ぶ機会が生まれました。「この仕事が大好きだ」と語る現地の職人の姿は、どの国にも共通する「手作りの喜び」を改めて感じさせました。
ツナガル株式会社の国際的な役割
ツナガル株式会社は、日本とGCC諸国との架け橋となるため、2024年6月にはUAEのドバイに現地法人を設立予定です。このような取り組みを通じて、日本の伝統工芸や文化を国際的に広める役割が期待されています。
今後もこのような国際交流を視野に入れたイベントが増えることで、伝統と未来をつなぐ新しい試みが続いていくことでしょう。