ミリ波センサによる新しい非接触呼吸モニタリング技術の革新
近畿大学医学部の研究チームが、電子部品メーカーのSMK株式会社と共同で開発した新たな呼吸モニタリングシステムが、医療現場に革新をもたらすことが期待されています。このシステムは、胸部のX線撮影やCT検査において、患者の呼吸状態を非接触で測定することが可能です。従来の方法では目視や経験に頼っていたため、正確性に疑問が残る場面が多く存在しましたが、この新しい技術により、より安全で的確な診断が行えるようになります。
研究の背景と目的
胸部の画像診断では、息を止めたり特定の呼吸状態を維持したりすることが重要ですが、従来は技術者の経験に依存していたため、患者の呼吸状態を正確に把握することが困難でした。この不十分な管理が、診断の精度を下げる要因となっていました。特に小児や乳幼児の場合、呼吸の指示に従うことが難しいため、より一層の工夫が求められています。
新しいシステムの特長
このシステムでは、ミリ波センサという新技術を用いており、特に注目すべきは、非接触である点です。患者の衣服の上からでも正確に呼吸状態を測定できるため、プライバシーにも配慮されています。また、ミリ波は安価であるため、導入コストを大幅に抑えることができます。これにより、全国の多くの医療機関で利用されることが期待されています。
研究成果の詳細
研究チームは、健康なボランティア20人を対象に呼吸波形を計測しました。ミリ波を胸部に照射し、その反射波を解析することで呼吸の動きを正確に記録しました。その結果、従来の方法では計測が困難であった乳幼児や小児の呼吸状態を正確に捉えることに成功しました。
初めてミリ波センサを使用することで、様々な姿勢での呼吸状態を安定して測定できることも確認され、医療現場への導入に向けた大きなステップとなりました。
臨床への応用と今後の展望
研究グループは、製品化に向けてSMK株式会社と協力し、2026年度中の薬事申請を目指しています。このシステムが実用化されれば、息止めのタイミングをリアルタイムで確認でき、不適切な呼吸状態での撮影を防ぐ効果が期待されます。また、放射線治療においても、より正確な治療を支援することができるでしょう。
研究者の思い
門前一教授は、「非接触で正確な呼吸状態の把握が、患者さんや医療従事者の負担を軽減し、診断精度を向上させる可能性がある」と述べています。この研究は、多くの患者にとってより良い医療を提供するための重要な一歩となるでしょう。