目から鱗の何故を問う! 『反・東大の思想史』とは
2024年5月22日、新潮選書から発売された尾原宏之著の『反・東大の思想史』が、東大生協の書籍部で驚異的な売上を記録している。この本は、東大生の間だけでなく、全国の書店でも注目の的となり、両キャンパスで人文部門ランキング1位を獲得し、特別なPOPとパネルが制作された。
売上だけではない、その深い影響
この書籍が売れ続けている理由は、その内容にもある。同書は、「反・東大」というテーマを通して、日本における知識と権力の在り方を問いかけている。国家のエリート養成機関という立場に対抗し、教育者や思想家たちがどのように反旗を翻してきたのか、その歴史的背景が詳しく綴られている。
特に、著者の尾原宏之は、これまでの思想史にはあまり焦点が当てられなかったさまざまな「反・東大」立場を掘り下げている。慶應義塾の福澤諭吉から始まり、早稲田大学や京大、さらに労働運動にまで波及する文脈を描写し、学歴による格差の問題に触れながらも、学問の意義について新たな視点を提供している。
「反・東大」の豊かな内容
本書の目次を見てみると、様々な章が東大に対する批判的視点を用いて構成されている。第1章では屯田兵制度と慶應義塾の福澤諭吉の戦いが描かれ、第4章では一橋大学が自負と倒錯を持って東大と対峙する様子が語られる。また、同志社の教育理念や、京都大学の反抗心も織り込まれ、単なる批判ではなく、多様性を尊重した学問の歴史が描かれている。
東大出身者の賛同
この書籍は、さまざまな東大の卒業生たちからも高く評価されている。御厨貴名誉教授をはじめ、著名な卒業生たちが推薦コメントを寄せており、彼らはこの本が如何に多くの議論を喚起しているかについて触れています。特に、「東大は一日にして成らず。抵抗者たちに鍛え抜かれて今の東大があることがよく分かった」という一言は、多くの読者の心に響くことでしょう。
著者のメッセージ
尾原宏之は著書を通じて、東大に挑戦してきたさまざまなグループや個人の苦闘を歴史的に振り返りながら、現代社会における東大の役割とその変革の可能性についても言及しています。彼は、日本の国家や社会を語る上で、東大の存在を抜きにしては語れないとしながらも、別の未来の構築を目指してきた抵抗者たちの歴史にも光を当てようとしています。
これからの読者へ
『反・東大の思想史』は、ただの書籍ではなく、東大や日本社会の持つ複雑な関係を問い直す一助となるだろう。特に、学生や教育者にとっては、新たな視点を得るための貴重なリソースとなるはずだ。しかし、この書籍は単なる歴史書に留まらず、今後の日本社会を考察するための有益な材料を提供するものでもある。
尾原宏之の深い洞察が詰まった本書を手に取り、あらためて自分自身の思想を見つめ直してみるのはいかがだろうか。もしかしたら、あなたの中にも「反・東大」の思想が根付いているかもしれない。それを知り、自らの考えを深めるきっかけになることを期待したい。