量子回路の冷却技術を高速評価する新たな手法が確立

量子回路冷却技術の新展開

近年、量子計算技術への関心が高まり、多くの研究機関がその性質を活かした新たな技術の開発に励んでいます。その中でも、国立研究開発法人産業技術総合研究所（産総研）と東京理科大学による量子回路における冷却技術を迅速に評価する新手法が注目されています。この技術は、光子吸収を用いて冷却の状態を素早く測定できるもので、量子技術の進化に大きな影響を与える可能性があります。

研究の背景と目的

超伝導体と常伝導体を利用したこの新技術は、極低温で高い計算能力を実現できると期待されています。従来の技術では、光子吸収後の量子回路への影響を高精度で測定することが困難でした。しかし、今回の研究では、冷却個体の量子ビットの励起周波数変化を測定することで、光子の残存エネルギーを正確に評価することに成功しました。

技術の核心

新たに開発された技術では、光子を吸収する過程で量子ビットの共鳴周波数が変わる現象を利用します。この変化を分光測定により検出することで、冷却後の量子回路に残る光子の量を迅速に評価できる仕組みです。これにより、冷却された量子回路においても1粒以下の光子のエネルギーを高精度で測ることができ、これは他の技術に比べて約15倍の速さでエネルギーを低減する効果を示しています。

社会的意義と今後の展望

この冷却技術は、エラー率の低下を目指す量子コンピューター技術に非常に重要です。量子ビットの初期化が高速かつ高忠実度で行えることで、量子コンピューターの実用化が進むと期待できます。今後、超伝導量子ビットの性能向上に向けた技術開発が進められるほか、磁性体を用いた量子回路など新たな領域への応用も視野に入れています。