進行・再発胸腺癌に対する新たな治療法の展望
進行・再発胸腺癌治療の新たな選択肢が、順天堂大学医学部の研究チームによって示されました。この研究では、免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブと、従来の化学療法薬カルボプラチンおよびパクリタキセルを併用した"MARBLE試験"が実施されました。
胸腺癌とは?
胸腺癌は非常に希少な腫瘍で、年間約0.15例の発症率とされ、全腫瘍の中でも極めてまれな存在です。この病気の治療法開発は困難で、新たな選択肢が求められています。
研究の背景と目的
本研究は、進行・再発胸腺癌の治療法を確立し、患者に新たな希望を与えることを目的としています。これにより、治療の有効性や安全性を明らかにし、標準治療の確立を促進することを目指しています。また、PD-1経路阻害薬が胸腺癌患者に与える影響にも注目し、これまでの治療法を上回る可能性が期待されています。
MARBLE試験の概要
この試験には、全国の15の医療機関が参加し、2022年から2023年にかけて48人の患者が登録されました。治療プロトコールには、次の手順が含まれています。
1. カルボプラチン(AUC 6)
2. パクリタキセル(200 mg/m²)
3. アテゾリズマブ(1200 mg)
- これらを3週間ごとに投与し、最大6サイクル行う。
- アテゾリズマブ単剤を3週間ごとに投与し、最大2年間継続。
結果の概要
本試験の評価の結果、客観的奏効率(ORR)は56%という高い数値を記録しました。また、無増悪生存期間(PFS)の中央値も9.6ヶ月と、期待以上の効果が確認されました。さらに、治療に伴う副作用は予想の範囲内で、コントロール可能な副作用に限られました。
今後の展望
この研究結果は、進行・再発胸腺癌患者に希望をもたらすものであり、カルボプラチンとパクリタキセルにアテゾリズマブを併用する新たな治療法が、今後の治療の標準化につながることが期待されます。次のステップとして、国内外での保険承認プロセスや個別化医療に向けたバイオマーカー研究が進められる予定です。
研究者のコメント
宿谷准教授は、「胸腺癌は治療法の開発が進みにくい疾患です。この治験を通じて新たな治療法の有効性が示され、より多くの患者が救われることを願っています」と述べています。この研究の成果が、多くの患者に新たな治療波が届くことを期待します。