アジア太平洋地域のホテル投資の動向
2025年上半期のアジア太平洋地域におけるホテル投資額が47億米ドルとなったというJLLの調査結果が発表されました。これにより、まさにこの地域の成熟したホテル市場への注目がより選別的になりつつあることが見えてきます。
投資額の分布
調査によると、投資が特に集中しているのは日本や大中華圏、オーストラリア、シンガポール、韓国といった五か国で、これらの国が総投資額の84%を占めています。特に日本では投資額が15億米ドルに上っており、この地域の投資をリードしています。
続いて、大中華圏が7億4,400万米ドル、オーストラリアが6億6,400万米ドル、シンガポールが5億4,600万米ドル、そして韓国が5億400万米ドルとなっています。その他の地域の市場では、投資額は7億5,800万米ドルに止まり、全体の16%に過ぎません。
マクロ経済の影響
しかし、2025年上半期においては、前年同期比で23%の減少が見られました。これは、世界的なマクロ経済の不確実性が投資判断に影響を与えているため、投資家たちがより慎重な姿勢を取っていることの表れです。結果として、セーフヘイブンとなる市場への注目が高まり、買い手と売り手の評価額の乖離も広がりを見せています。
JLLの見解
JLLのアジアパシフィック部門のCEO、ニハット・エーカンは次のように述べています。「昨年高水準だったホテル投資が減速していることは、資金源の再編が行われ、より慎重な投資環境が整いつつあることを示しています。」また、プライベートキャピタルが安定した収益性を持つホスピタリティ資産の確保に動いていることから、将来的な市場活性化が期待されています。
プライベート・エクイティ・ファンドの攻勢
JLLのデータによれば、プライベート・エクイティ・ファンドがホスピタリティ資産への投資を増やしており、その投資額は前年同期比で6%増加しています。これは、市場の価格メカニズムにおける混乱と割安な資産を取り入れる戦略を反映していると考えられます。
特に、2025年上半期には富裕層(HNWI)がホテル投資を通じてポートフォリオの多様化を模索し、前年同期に比べて54%も増加したことが示されています。これは、アジア太平洋地域のホテル市場が堅実なファンダメンタルズに支えられ、成長が期待される背景を持っているからです。
東京を含む主要都市の状況
主なゲートウェイ市場では、都市ごとのパフォーマンスに差が見られました。特に東京は稼働率が80%を超え、コロナ前の水準を上回る客室平均単価(ADR)を示しています。また、シンガポールも2019年を凌駕するADRを維持しており、シドニーも80%を超える稼働率を記録しています。
今後の見通し
JLLは、2025年通年のアジア太平洋地域のホテル投資額は前年比で5%増、128億米ドルに達することを予測しています。2025年後半にはデューデリジェンス中の取引が完了し、投資活動が加速するでしょう。
加えて、従来の主要市場である日本、オーストラリア、大中華圏、シンガポール、韓国では高い流動性が維持される一方で、ベトナムなどの市場でも観光需要が高まり、賛同を得ることが期待されています。
最後に、JLLの阿部有希夫ジェームズは、日本のホテル投資市場が活況を呈していると指摘します。訪日外国人観光客の増加や円安が、ホテル投資市場の需要を支える重要な要素です。
JLLについて
JLLは、グローバルに不動産に関わるすべてのサービスを提供する総合不動産サービス会社です。世界80ヵ国以上で展開し、約112,000名の従業員を擁する国際的な企業です。