飛騨の美しい冬の風物詩「花もち」
岐阜県高山市の冬の風物詩として親しまれている「花もち」。この地域では、冬が厳しい寒さを迎えると、活葉樹が葉を落としてしまいます。そのため、多くの人がこの時期に花に見立てた餅を木の枝に飾る「花もち」の文化を大切に守り続けています。お正月の縁起物として、大切な行事に欠かせない存在です。
花もち作りの中心となるのは、江名子町に位置する「飛騨の花もち組合高山工房」。ここでは、地元の農家の女性たちが集まり、毎日手作業で花もちを製作しています。11月中旬から始まるこの作業は、年末が近づくにつれて最盛期を迎えます。昨年の12月5日には、工房内での活気あふれる様子が見られました。
工房では、もち米が栽培され、作業に参加する女性たちがそれをついて、食紅で色をつけた餅を細長くカットします。そして、木の枝に花のように巻き付けていくのです。この工程は非常に丁寧で、数日から1週間ほど乾燥させてから、工房内や近隣の朝市で販売されます。また、東京都、大阪、名古屋といった大都市にも出荷され、飛騨の風物詩を広めています。
工房の代表を務める中野純江さんは、「気温が低いほど乾燥がうまく進み、ひび割れにくくなるが、今年は暖冬で少し心配になっている」と語ります。さらに、「花もち作りが始まると年末を感じるし、来年も良い年が訪れることを願って製作している。飾られた花もちを見て、明るい気持ちで新年を迎えてほしい」と明かしました。工房では、12月25日ころまで花もちの製造が続き、地域の人々や観光客の心を温めています。
花もちとは
「花もち」は、木の枝に紅白の餅を巻きつけて作り上げられ、福を招くとされています。この文化の背後には、農耕の神様にささげる「予祝儀礼」という行事があると言われています。江戸時代には、正月の縁起物としてこの習慣が広がったとされています。地域によっては「餅花」とも呼ばれることがありますが、飛騨では愛着を持って「花もち」と呼ばれています。
大きさは様々で、手のひらに載るものから3メートルほどのものまで兄があり、中でも30センチ程度のものが一般的です。
飛騨の冬を彩り、地域の人々の心を結ぶ花もち。その美しい姿と共に新年を迎える準備が整います。ぜひ、飛騨を訪れた際には、この伝統を肌で感じてみることをお勧めいたします。