植物寄生性線虫の独自進化を解明した新たな研究成果に迫る

植物寄生性線虫のユニークな進化を探る

明治大学と帯広畜産大学の共同研究チームが、植物寄生性線虫の感覚ニューロンの微細構造とその進化的起源を解明した。透過型電子顕微鏡を用いた詳細な観察により、これまでに知られていなかった「五型ニューロン」と呼ばれる感覚ニューロンの３次元像が再構成された。

植物寄生性線虫とは？

植物寄生性線虫は、樹木や作物に甚大な被害をもたらす害虫として位置付けられている。さまざまな線虫の中でも特に繁栄しており、植物に寄生する能力が高いことが特徴だ。これまでの研究では、植物寄生性線虫が持つ特殊な感覚ニューロンが寄生戦略において重要な役割を果たすとされてきたが、その詳細な機能については謎が多かった。

新たな研究の意義

本研究では、マツノザイセンチュウの頭部における感覚ニューロンの形態情報を収集し、200枚以上の薄切片を電子顕微鏡で観察。得られたデータを基に、五型ニューロンの詳細な構造を３次元的に再構成することに成功した。これにより、五型ニューロンが先端部分で複雑に分岐し、頭部表層直下まで伸びている様子が明らかとなった。

このニューロンが触覚として機能していることが示唆され、さらに、線虫が餌を摂取する際に使う「口針」との関係も確認された。このことから、五型ニューロンは線虫が食物を探し求める行動において重要な役割を持つことが分かった。

行動撹乱と防除法の展望

今後5型ニューロンの機能解析や、その受容体の特定を通じて、新たな防除法や行動撹乱技術が開発されることが期待されている。五型ニューロンが特異的に進化してきたことから、より選択的な殺線虫剤の開発が可能となるかもしれない。この研究は、植物寄生性線虫の防除に関する重要な手がかりを提供するものであり、農業被害の軽減に向けた第一歩となるだろう。

今後の研究課題

研究はまだ終わりではない。五型ニューロンが受け取る環境刺激やそのメカニズムを解明するために、さらなる解析が求められます。また、遺伝子発現解析を行うことで、どの遺伝子が五型ニューロンの機能に関与しているのかを明らかにし、新たな防除法の開発に役立てていく計画だ。

この研究結果は、2025年11月12日に発表された国際的な学術誌「Journal of Comparative Neurology」に掲載される予定であり、今後の農業と生態系における影響についても期待が寄せられている。