空き家問題の新たな解決法
2021-07-27 11:32:12

新しい空き家活用の形『さかさま不動産』が注目を集める理由

近年、少子高齢化や人口減少の影響で、空き家が日本中の地域で増加しています。2040年にはその数が40%を超えることが予測され、社会問題として深刻に捉えられています。そんな状況を受けて、逆転の発想で空き家問題に新しい価値をもたらそうと立ち上がったのが『さかさま不動産』です。

この新しい不動産サービスは、従来の物件情報を並べる形式とは異なり、借り手の目標や願いが最初に紹介されるウェブサイトを通じて、貸主側がアプローチを行う仕組みです。借り手の人物像を事前に把握することで、潜在化している空き家を発掘し、そこを通じて貸主と借り手の関係を築く実証実験として、2020年6月に提供が始まりました。

このサービスの発想のベースには、地域における空き家や未利用スペースを活かした地域活性化に取り組んできたOn-Coの経験があるといいます。サイト上には「安心して産める助産院を作りたい」や「ガソリンスタンド内にコーヒースタンドを開店したい」といった多様な夢や想いが掲示されています。

最近、愛知県名古屋市の大須エリアにて、一つの成約が成立しました。接客とクリエイティブを重視したシーシャ(水たばこ)カフェを開業したいという野望を持つ水橋サスケさん(23歳)がその主役です。彼は学生時代から、若者やクリエイターが集う場を生むために様々なイベントを創り出してきました。その期待の新店舗は、従来のアングラなイメージを一新し、明るくクリーンな雰囲気の中で、業務スペースも兼ね備えた、「サードプレイス」を目指しています。また、7月には物件内の残留物の処理を進め、8月には開業資金を集めるためのクラウドファンディングを予定しています。

彼に物件を貸すことにした家主は、同市内で事業を営む方です。倉庫としての引き合いもあった物件ですが、つまらない使われ方は避けたいと考えており、面白い人や活気のある活動をする人に使ってもらいたいという気持ちが強く働きました。水橋さんとの出会いも、さかさま不動産を通じたものです。貸主は「面白いことをしたいと考えている物件オーナーは多いが、従来の不動産仲介では借り手の想いや目標を前もって知ることは難しかった」と語ります。

このように、『さかさま不動産』は、物件の夢を実現(確定)させるための新たな枠組みを提供してきました。これまでにも、名古屋市内の書店やミキシングアートの場など、合計7件の事例が生まれています。このサービスは人々のモチベーションを引き出すものであり、借り手のストーリーを知ることで、貸主や地域住民もその活動を支援する体制が整い、空き家という資源を有効活用しています。

さらに、借り手の多くはサステナブルな志向を持つ人々であり、地域の余白を埋め、街の活性化にも寄与するような副次的な効果も生まれています。

On-Coが描く未来像は、発信力を持った想いが地域全体から応援を受ける世界です。そうした挑戦の形を可視化し、空き家問題の解決を目指して新たな価値を創出し続けることを目指しています。サービス開始から約1年が経過した現在、2021年9月にはその成果や様々な現象について報告する会が予定されています。細かな日程は8月に改めて発表されるということで、今後の展開にも期待が寄せられます。

会社情報

会社名
株式会社On-Co
住所
三重県桑名市西別所1375
電話番号
080-5984-7800

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