倉庫に眠る大量の生地を再利用し、繊維業界の新たな価値を創出する取り組みが注目を集めています。KIZIという企業は、長年活用されていなかった生地をデータ化し、ゲームや映像、そして3Dプリンター市場へと展開するビジネスモデルを構築しました。この試みは、単に収益を上げるだけでなく、廃業が相次ぐ日本の生地メーカーに対して、新たな可能性と収益の一部を還元することを目指しています。
厳しい状況を打破する新ビジネスモデル
近年、日本のアパレル業界は厳しい局面を迎えています。安価な海外生地の流入や国内市場の縮小、人手不足、跡継ぎ不在などが重なり、多くの生地メーカーが倒産や廃業の憂き目にあっています。そこで、KIZIは倉庫に眠る生地—中には100年以上前の技術を使用したものも含まれます—に新しい命を吹き込むことを決意しました。特に尾州、桐生、泉南、北陸など、日本固有の優れた織物技術を持つ地域から70社以上が参加しています。
生地データ化のプロセス
KIZIは現在、2万点以上の生地をデータとしてスキャンしています。データ化された生地は、テクスチャと呼ばれ、実際の物体の表面にリアルな質感や詳細を追加するために使われます。これにより、ゲームや映画、建築、3Dプリントなど、多岐にわたる分野で使用されることが可能になります。テクスチャは、視覚的なリアリティを加えるため、様々なマップによって構成されます。
具体的には、次の6種類のマップがあります。
1.
Alpha(アルファ)マップ: 透過性を制御。
2.
Normal(ノーマル)マップ: 表面の凹凸感を表現。
3.
Displacement(ディスプレイスメント)マップ: 実際のジオメトリを変形。
4.
Specular(スペキュラー)マップ: 光沢を制御。
5.
Roughness(ラフネス)マップ: 表面の粗さ。
6.
Color(カラーマップ): 基本的な色や模様を提供。
これらのマップは、プロフェッショナルな画像ファイル形式であるTIFで提供されます。この形式は、高品質を保ったままのデータ保存を可能にし、幅広い色彩やダイナミックレンジな表現を実現します。
コンテンツ販売モデル
KIZIは、商用利用が可能なQualitative Textureを提供し、価格帯も多彩です。単品購入や個人向け、高解像度のチームプランなど、さまざまなニーズに応える形で販売されています。特徴的なのは、低解像度のテクスチャを150円から購入可能な点で、個人ユーザーにも使いやすい価格設定がされています。
また、知的財産権に対しても、提供された生地を使用しているため法的な問題は発生しないように配慮されています。
今後の展開
KIZIは、既に有限会社カナバングラフィックスの指導を受け、システム開発を進めており、一部上場のゲーム企業からも関心を寄せられています。これからのイベントでは、これらのデータ化された生地による新たな価値創造が、多くの人に知ってもらえる機会が増えていくことでしょう。日本の生地業界を再生させるこの挑戦は、現代の技術を駆使した次世代のビジネスモデルとして、多くの期待を寄せられています。KIZIは、ただのデータ販売業者ではなく、地域コミュニティやメーカーの未来を大切にしながら、持続可能なビジネスを追求していくのです。