インキュベイトファンドの新たな挑戦
インキュベイトファンド株式会社が新しく300億円規模のグロースファンド「IF Growth」を組成し、ファーストクローズを無事に完了させました。このファンドは、非上場グロース市場の資本循環を活性化させ、日本のスタートアップが成長するための基盤を強化することを目指しています。ファンドの運営には、元SMBC日興証券の井原昌史氏が専任ジェネラルパートナーとして参加します。
非上場グロース市場の現状と課題
最近、スタートアップを取り巻く資本環境は大きな変革を迎えています。上場市場改革が進み、M&Aやセカンダリー取引への需要が高まる中で、非上場のグロースステージにおいて継続的な資本供給が求められています。しかし、現在の日本ではこの分野に必須なプレイヤーが限られており、多くのスタートアップにとって脆弱な成長環境となっています。そこで、インキュベイトファンドは2000年からの経験を活かし、非上場グロース市場に新たな選択肢を提供することを決定しました。
「IF Growth」の特徴
「IF Growth」は東京都の支援を受け、「官民連携インパクトグロースファンド」として運営されています。これにより、公式な支援を基盤にスタートアップを積極的にサポートする体制が整っています。最近発表された東京証券取引所の「グロース市場の今後について」は、上場維持基準の見直しを通じて、流動性や成長性、業績の質に重きを置いた改革を促進し、インキュベイトファンドもこれを積極的に支持しています。これから求められるのは、非上場企業が確実に成長できる資本で、そのニーズに応えるために「IF Growth」が設立されたのです。
投資戦略と対象領域
このファンドは、以下の3つの重要な領域に焦点を当てて投資を行います:
1.
Deep Tech:国家戦略上重要な先端技術に関連するプロジェクト。
2.
Creative Industry:新たなIPの創出や既存の国産IPの価値向上に資するテーマ。
3.
Business Solution:国内産業全体の生産性を高めるデジタルソリューション。
特に、地政学リスクや公共性の重要性が増す昨今、これらの領域での成長企業に投資を行うことで、国内スタートアップの価値を最大化しようとしています。
シードステージファンドのファイナルクローズ
また、インキュベイトファンドはシードステージ専業のファンドとして、205億円の資金を集めた第6号ファンド「IncubateFund VI L.P.」もファイナルクローズしました。このファンドでは、世界で競争力を持つスタートアップの育成を目指し、以下の領域に重点を置いています:
- - Japan to Global:グローバルに通用するビジネスの育成。
- - Green Innovation:脱炭素や省エネルギーに貢献する技術への投資。
- - National Security Tech:国家の安全保障に関わる技術分野。
- - Large Domestic Digital/AI Transformation:国内のデジタル化を加速させるプロジェクト。
インキュベイトファンドの伊原昌史氏の魅力
井原昌史氏の経歴は秀逸であり、彼は日興証券に入社後、10年間でIPOコンサルティングを担当。以降も、数多くのIPO案件に関わりながら、資金調達を支援してきました。このような豊富な経験が、ファンド運営における戦略的な対話とエクイティストーリーの構築に大いに寄与するでしょう。
エコシステムの価値共創を目指す
インキュベイトファンドは、今後も専門性の高い人材を招聘し、さまざまなステークホルダーと協調しながら、エコシステム全体での価値共創を目指します。「IF Growth」は、その起点となって日本のスタートアップ市場を変革するための重要な役割を果たすことでしょう。今後の展開に注目が集まります。