アジア太平洋地域の物流・産業用不動産市場の新たな展望
2023年9月30日、コリアーズ・インターナショナル・ジャパンは、アジア太平洋地域における物流・産業用不動産市場の最新動向をまとめたレポートを発表しました。このレポートは、アジア太平洋地域における市場の変化を詳細に分析し、日本市場に特有の現状と未来への展望を提供しています。
アジア太平洋地域の市場概況
アジア太平洋地域の物流・産業用不動産市場は、現在大きな転換期を迎えています。2025年上半期には新規供給量が前年同期比で6%減少すると予測され、テナントのニーズが多様化しています。特に、サードパーティロジスティクス(3PL)やEコマースの成長が、質の高い倉庫スペースに対する需要を喚起しており、市場は二分化の傾向を強めています。
経済成長が底堅い中で、消費者心理が改善し、業務効率化や自動化が求められるようになっていますが、地域によって賃料の動向には大きな差があります。インド、オーストラリア、シンガポールでは賃料が上昇する一方、中国本土では供給過剰から賃料が下落しています。
日本市場の現状
日本においては、東京圏での新規供給が続いており、2025年上半期に130万㎡を超える新規物件が竣工予定です。しかし、供給過剰の状態は未だに続いており、需給バランスの回復には時間がかかると見込まれています。
特に、日本市場では労働力の確保が企業にとって最も重要な課題となっています。これは、立地の選好や求められる施設の仕様に大きな影響を与えています。人口が集中する東京都心部への需要が強まる一方、郊外における中小規模の物件は、そのリーシングが長期化する傾向にあります。また、空調完備や自動化対応の倉庫を求める声も顕著で、全体として「質への逃避」というトレンドが進行中です。
アジア太平洋地域のトレンドに於ける日本市場の位置づけ
アジア全体で見られる「質への逃避」は、日本の物流・産業用不動産市場にも浸透しています。高品質の物件への需要が拡大し、倉庫の自動化が進む中、3PL事業者が市場をけん引する要素として重要視されています。
しかし、日本特有の市場の動向も見えてきました。賃料の変動が小幅に留まる一方で、労働力確保と施設仕様の向上が賃料コストに優先される傾向が見受けられます。2023年以降の供給過多が続く中で、賃料の動きは鈍いものの、一定の価格上昇を受容する傾向が顕現し始めました。
Eコマース市場の可能性
日本のEコマース市場は2023年度に24.8兆円に達し、成長の余地が大いに残されています。しかし、全小売売上に占めるEC化率は9.4%にとどまり、韓国や台湾と比較するとまだ低い水準です。このため、今後は人口集積地周辺での配送効率が求められる中で、新たな需要が見込まれます。
未来への展望
日本の物流・産業用不動産市場は、依然として供給過剰の課題に直面していますが、経済の安定成長とEコマースの拡大が支える将来の需要は底堅い状況です。労働力確保や質の向上を重視する流れが続く中で、日本市場は、国際的な投資や市場との相互作用を通じて、より一層洗練された形に進化していくことが期待されています。
コリアーズについて
コリアーズ・インターナショナルは、事業用不動産サービスを提供する世界的なプロフェッショナルサービス会社であり、東京と大阪を拠点にしたコリアーズ・ジャパンも同様に、国内外の不動産市場において高品質な情報とサービスを提供しています。今後の展望を考える上でも、大変注目したい企業です。