日本初のころやわフロアを全室設置した緩和ケア病棟がオープン
大阪府にある済生会千里病院に、新たな緩和ケア病棟がオープンしました。この病棟の特徴は、日本で初めて全室に「ころやわフロア」を設置している点です。このフロアは、転倒時の衝撃を和らげる設計が施されており、高齢者やがん患者が安全に過ごすための新たな環境整備として注目を集めています。
ころやわフロアの導入経緯
緩和ケア病棟の設立にあたり、病院では患者の行動制限を最小限にしつつ、転倒や転落のリスクを軽減したいとの考えからころやわフロアの導入を決定しました。この施策は、患者のADL(日常生活動作)とQOL(生活の質)を維持・向上させることを目指しています。
病棟部門の看護師、大嵩ゆきさんは、以前の経験から転倒リスクが高い緩和ケア病棟で、ころやわフロアの導入に強い期待を寄せています。彼女は、患者だけでなく看護師や家族にとっても安心感を提供するものだと述べています。また、デザイン面においても木目調で温かみのある印象を与え、病棟全体の雰囲気を和ませる効果があると感じているようです。
患者の自由な行動を促進
岩上雄一さん、がん総合診療センターの副センター長は、緩和ケア病棟の開設担当者として、ころやわフロアの導入を推進してきたひとりです。彼は、患者が自由に動ける環境を提供することが重要であると強調し、看護師の側でも患者の転倒に対する責任感が軽減されることで、より良いケアが期待されると語っています。また、内覧会では地域の医師から、「患者を生活者として支える視点が素晴らしい」との評価も得られ、医療従事者の間でも積極的な反応が見られています。
患者との継続的なケアの重要性
済生会千里病院副院長の福﨑孝幸さんは、がん診療と緩和ケアの統合を実現することが、患者にとって非常に重要であると述べています。彼は、診断から終末期まで一貫したケアを提供することの大切さを強調し、患者の尊厳を保つために環境整備が役立つと話しています。
ころやわフロアの特性
「ころやわフロア」は、歩行の快適性と衝撃吸収性を兼ね備えた画期的な床材です。通常時は快適に歩ける一方、転倒時には衝撃を吸収し、患者の安全を確保します。高齢者の大腿骨骨折のリスクが大幅に低減されるため、患者が安心して自立した生活を送る手助けとなります。
企業情報
このプロジェクトを支える株式会社マジックシールズは、2019年に設立されたスタートアップで、異なる分野の知識を結集して革新的な製品を開発してきました。自動車工学と医学を基にした新素材を用いて、転倒骨折を予防するための床材「ころやわ」を製造・販売しています。
大阪府がん診療拠点病院である済生会千里病院でのこの新しい取り組みは、患者にとっても医療従事者にとっても、大きな安心感を提供するものになるでしょう。今後の緩和ケア病棟の効果検証が待たれる中、患者の生活環境がどのように変わるのか、注目が集まります。