登山者のリアルな声をAIが収集
AI技術の進化とともに、新たな市場調査手法が登場しています。Asterminds株式会社と株式会社白馬館が共同で実施した実証実験(PoC)は、登山者の隠れたニーズを浮き彫りにする画期的な試みです。これにより、観光業界における顧客理解が根本から変わる可能性を秘めています。
1. 背景さまざまな観光課題
白馬エリアは多くの登山者を惹きつける一方で、訪問者の属性や目的の多様化、多言語対応の難しさという課題を抱えています。特に訪問者の声がデータとして蓄積されないことは、観光業の発展を阻害する要因となっています。Astermindsが開発したAIエージェント「AIヒアリング」は、これらの課題を解決する手段として期待されています。
2. AIヒアリングの実施内容
今回のPoCでは、AIエージェントが約50名の登山者に対し12.5時間のヒアリングを自律で実施しました。このプロセスでは、QRコードを通じて登山者がスマホを用いて音声で応答するという手法が取られました。その結果、従来の調査方式と比較して情報収集のスピードや深さが向上し、特に手軽さが参加者に好評を得ました。これにより、ストーリーを伴った情報が豊富に収集できるという成果が挙げられました。
3. 登山者のインサイト明らかに
調査結果から浮かび上がったインサイトでは、年代別の登山動機や体験の感想が興味深いものでした。
- - 20代は、コロナ禍の影響で自然を求めて登山を始める傾向が見られ、オーセンティックな体験を重視しています。
- - 30代は、身体的な変化から登山を始めたという声が多く、具体的な楽しみの要素を求めています。
- - 40代では、健康意識と仲間との絆が動機の中心となっており、過去の経験を基に再び登山を楽しむ姿が伺えました。
- - 50代以上の世代は、家族や孫からの影響で新しい挑戦を志向し、登山によって充足感を得ていることがわかりました。
これらの情報は、観光業界が今後のマーケティング戦略を考える上で非常に重要なデータとなります。
4. 関係者の反応
株式会社白馬館の代表取締役社長である松沢貞一氏は、「AIによって得られた生の声の質やスピードに驚いている」とコメントしています。特に、これまでの調査方法では得られなかった高い解像度で顧客の熱量を把握できたことは、今後のサービス向上に大きなヒントになると確信しています。
また、Astermindsの代表取締役である本多真二郎氏も、「AIを活用して収集した広範なインサイトは、企業が戦略的な意思決定を行うための第一歩となる」と語っています。この取り組みは観光業のみならず、他の業界でも応用可能な手法として注目されています。
5. 意義と今後の展開
今回の実証実験によって得られた知見は、観光事業の活性化に寄与するだけでなく、さまざまなビジネスシーンでも有効活用が期待されています。実際、Astermindsの「AIヒアリング」は、数百名規模の業務ヒアリングや業務棚卸しに展開される可能性があるため、企業や自治体が迅速かつ透明性のある意思決定を行うための環境を構築する手助けとなるでしょう。
このように新しい技術を用いたヒアリング手法は、観光業の質を向上させるだけでなく、他のビジネス領域でも革新をもたらすものとなりそうです。