cosmobloomとスタッフ、衛星ダイレクト通信に向けた新技術開発を発表
株式会社cosmobloom(東京都大田区)とスタッフ株式会社(神奈川県横浜市)が、衛星ダイレクト通信の実現に向けた膜面アンテナの共同開発を開始しました。この取り組みは、宇宙通信の未来に大きな影響を及ぼすものと期待されています。
共同開発の背景
両社は、宇宙空間における大型構造物の実現を目指しており、まずは超小型衛星向けに設計された0.25Uデオービット装置の開発から着手しました。そして、その次のステップとして、携帯電話やPCとの直接通信を可能にする数メートル級の膜面アンテナの開発を決定しました。
これまで、JAXA宇宙構造物システム研究室との共同研究を通じて、膜面アンテナの基礎的な設計技術を培ってきました。この共同開発では、両社の技術を組み合わせることで、アンテナ設計と製品化に関する技術的なギャップを解消することが狙いです。
卫星通信サービスの市場拡大
昨今、SpaceXやAST SpaceMobileによる衛星通信サービスが拡大している中、衛星ダイレクト通信の需要は急成長を遂げています。この高速・大容量通信を実現するには、数メートルから数十メートルの大型アンテナが不可欠ですが、従来の剛体パネル型アンテナでは、重量や収納性の観点から制約がありました。今回の共同開発では、軽量で収納性にも優れた大型のフェーズドアレイアンテナを、小型衛星に搭載する新しい可能性を追求しています。
展望と用途の多様性
膜面アンテナの技術は、衛星ダイレクト通信に留まらず、合成開口レーダー(SAR)やLPWA(Low Power Wide Area)アンテナとしての用途も期待されています。特に、アンテナの大型化が進んでいる現代において、膜面アンテナの軽量性と高い収納性は大きな優位性となるでしょう。従来の剛体パネル型アンテナに代わる新たな選択肢となることが見込まれています。
今後、膜面アンテナが技術的に進展することで、面精度が比較的低い構造でも理想的な電波出力が可能となり、これが宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実現へとつながる重要なステップとなることを目指しています。
企業の紹介と理念
cosmobloomは、日本大学理工学部航空宇宙工学科宮崎研究室を母体とし、膜やケーブルなどの柔軟な構造を用いた宇宙構造物の解析・設計・開発を手掛けている企業です。特に、非線形弾性動力学解析コードNEDAは、2010年にJAXAが打ち上げた小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSの膜面の展開シミュレーションに利用され、成功を収めた実績を誇ります。
スタッフ株式会社の中山和則社長は、今回の共同開発に意義を強調し、宇宙空間で通用する大型アンテナの開発が必要不可欠と述べています。また、福永桃子社長は、スタッフとの共同作業を通じて、実用化に向けた迅速な設計が可能になることを感謝し、期待を寄せています。
結論
この共同開発は、宇宙通信技術の更なる進化を促進するものとして、注目を集めています。膜面アンテナの普及は、新たな宇宙通信の時代を開く重要な鍵となるでしょう。