アラビア海の湧昇流の変化
2021-05-26 14:10:01
地球温暖化がアラビア海の湧昇流に与える影響とは
アラビア海の湧昇流の減少とその影響
近年、地球温暖化の進行により、アラビア海における湧昇流が弱まっていることが明らかになりました。この現象はインド洋の生態系や周囲の気候に多大な影響を及ぼす可能性があるため、注目されています。
湧昇流の役割と影響
アラビア海における湧昇流は、インド洋の夏季モンスーンによって生成され、深層の海水を表層に運びます。この際、深層の海水には低い温度と高い栄養素が含まれており、これが周辺の生態系の健康を保つ重要な要因となっています。具体的には、湧昇流は魚類やサンゴなど様々な生物にとって欠かせない環境を提供しており、漁業などの人間活動にも直接的な影響を与えます。
研究の背景
北海道大学や九州大学、喜界島サンゴ礁科学研究所の研究グループが行った調査によると、過去1,000年間のデータを分析した結果、現在の湧昇流は明らかに弱まっていることが判明しました。これは、インド洋周辺の温暖化が進行していることとその関連性が強いとされています。これまで多くの研究者は、ユーラシア大陸の温暖化が影響し、湧昇流が強まると予測していました。しかし、実際にはインド洋の温暖化がより顕著であり、その結果、湧昇流が弱くなった可能性が示唆されています。
研究方法
研究では、マシラ島から採取した造礁性サンゴの骨格を用いて過去の環境変動を復元しました。サンゴの骨格には、年輪のように環境の変化が記録されており、これを精密に分析することで、海水の温度や塩分の変化を明らかにしました。特に、酸素安定同位体比やSr/Ca比のデータを用いることで、湧昇流の強さを評価しました。
研究成果
研究の結果、アラビア海における湧昇流は過去1,000年と比較して弱化していることがわかりました。具体的には、湧昇流が強い時期には海水の塩分が低下する特徴が見られ、過去のデータと照らし合わせても、最近の湧昇流の強度は明らかに低下していることが示されました。
予想される影響
アラビア海の湧昇流の弱化は、インド洋の漁業や気候に波及する可能性があります。湧昇流が弱まることで、栄養分が減少し、海洋生態系、特に魚類の生息環境に悪影響を及ぼすことが懸念されています。また、気候も変化することで、モンスーンの強さやパターンに影響を与えると予想されます。
今後の展望
この研究は、アラビア海の湧昇流の減少という新たな事実を明らかにし、今後の気候変動に対する理解を深めるものです。特に、日本をはじめとする周辺国においても、この変化が大きな影響を与える可能性があるため、引き続き研究が求められます。地球の未来を考える上で、海洋環境の変化を追跡することが欠かせない課題となるでしょう。
会社情報
- 会社名
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NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所
- 住所
- 鹿児島県大島郡喜界町大字塩道1508
- 電話番号
-
0997-66-0200