2024年服部報公会「報公賞」とは
公益財団法人服部報公会は、1930年に設立され、工学分野における優秀な研究を称えるため「報公賞」を設けています。この賞は毎年、厳正な審査を経て、特に注目される研究者に贈られ、その研究成果が社会において重要な役割を果たすことを目的としています。今年度の受賞者として選ばれたのは、国立研究開発法人理化学研究所の川﨑雅司氏です。
川﨑雅司氏の業績
川﨑氏は東京大学大学院工学系研究科の教授であり、彼の業績として特に際立っているのは「酸化物の界面電子物性に関する先駆的研究」です。この研究は、トポロジカル量子電子物性という非常に特殊な現象に着目したものであり、彼の業績により半導体教育やスピントロニクス技術の応用が進む可能性が広がっています。
川﨑氏は、原子レベルで極めて高品質な金属酸化物薄膜を製造し、そこに新たな電子物性を発見しました。特に、酸化物高温超伝導体の薄膜製作で、世界的に先駆けて成功したことが注目されています。この手法により、酸化物界面の物理特性を新たに探索し、超伝導現象を電界制御によって誘起することにも成功しました。
新たな科学技術への貢献
川﨑氏の研究では、酸化亜鉛薄膜ナノ結晶を用いた励起子による室温紫外レーザー発振にも成功しています。この業績は、今後のエレクトロニクス分野における新技術の実現に大きく寄与するでしょう。また、彼は偶数分母の分数量子ホール効果を実証し、これにより自発的に蓄積される高移動度の二次元電子状態を発見しました。
さらには、マヨラナ粒子の存在が確認される可能性もあり、これが将来の量子コンピュータの特異な物性の理解に貢献することが期待されています。これにより、現在の量子コンピュータが抱えるノイズに対する耐性の問題を克服する糸口が見えてきました。
表彰の意義と今後
川﨑氏の卓越した業績は、次世代の量子コンピュータ開発に重要な影響を与えるとともに、未来の科学技術の進展に向けて新たな道を切り開いたと言えるでしょう。彼の研究は、学界・産業界での評価も高く、すでに数々の賞を受賞しています。
2024年10月9日には、報公賞の贈呈式が行われ、川﨑氏には賞状と共に1,000万円の賞金が授与される予定です。また同時に、16件の研究に対し総額1,600万円の工学研究奨励援助金も贈呈されます。長年にわたる服部報公会の功績は、今後も社会に貢献し続けることでしょう。
服部報公会の背景
服部報公会は、創業者の服部金太郎氏の後援により設立され、公益事業を目的としています。これまでに多くの研究者がその業績に対して高い評価を受けており、報公賞は広範な工学分野での研究成果を称える重要な賞となっています。今後も、この賞を通じて日本の科学技術の発展に寄与していくことが期待されます。