輪島塗作家、金沢で新たな拠点設立
2024年1月1日、日本の能登半島で大きな地震が発生しました。その影響で、株式会社細谷忠兵衛商店代表取締役の細谷幸夫さんは、自宅兼工房・ギャラリーを喪失するという痛手を負いました。震災から2年半が経過するものの、輪島は依然として復興の道のりにあり、かつて観光客で賑わった朝市や宿泊施設の再建も遅れており、観光業を支えた伝統工芸の環境も厳しいものです。
このような状況の中で、細谷さんは「輪島へ戻るために、まず仕事を取り戻そう」との決意のもと、金沢に新たな拠点を設け、事業再建を進めています。特に今後の展望として、2026年7月20日には完全予約制の「忠兵衛ギャラリー」、8月6日には輪島塗を中心とした伝統工芸品を扱うショップ「URUSHI NOIR(ウルシ ノワール)」を金沢市にオープンする予定です。
この新しい拠点の設立は、単に事業を移転することにとどまらず、未来に向けた復興の足掛かりと位置付けているのです。このプロジェクトを通じて、地域に根ざした「生業」を再構築し、伝統工芸の未来を切り開くための第一歩を踏み出しました。
復興の鍵は「生業」の回復
細谷さんは、「復興とは建物を元に戻すこと以上に、仕事を取り戻すことが重要だ」と語ります。能登半島地震の直後、彼は何度も自問しました。「伝統工芸には未来はあるのか」「輪島塗は再興できるのか」。時間が経つにつれ、復興には地域の基盤に根ざした「生業」の復活が不可欠だと感じるようになったのです。職人たちが仕事を得て生計を立て、長年受け継がれてきた技術や文化を次世代に伝えなければ、産地の復興は叶わないと強く認識しています。
新たな拠点の役割
金沢に設けられた二つの新拠点には、それぞれ特別な意味があります。まず、「URUSHI NOIR」は輪島の職人たちや他の産地の工房からの作品を取り扱い、伝統工芸の技術と情熱を未来へつなげる場を創出しています。ここでは、女性客に人気が高い「カワイイ」をテーマにした漆器やカラフルな器を展示し、伝統工芸を身近に感じてもらう工夫がなされています。
次に、忠兵衛ギャラリーでは、能登の風土と伝統を再現した空間設計の中で、輪島塗の文化功労者である三谷吾一氏の作品が中心に展示されています。来場者は、五感を通じて日本の文化を感じられる非日常的な体験ができ、輪島塗の深い魅力を再発見することができます。
新たな支援の形
また、2026年7月28日に発生した熊本地震に際しては、細谷さんは能登半島地震を経験した者として、被災者への支援を行う意向を示しています。彼は、能登で受けた多くの支援の恩を返したいと考え、「URUSHI NOIR」の売上の一部を熊本の傳統工芸事業者への支援に充てることを決定しました。この取り組みは、産地の垣根を超えた新しい形の支援となることを目指しています。
今後の展望
今後、株式会社細谷忠兵衛商店は、金沢を基盤にしつつ、輪島の職人たちや他の産地の仲間との連携を維持し、能登の復興や伝統工芸の新たな可能性を広める活動を続ける予定です。そして、2026年末には熊本県内の支援先を特定し、寄付の内容について公表する計画です。細谷さんの「輪島に戻るために、金沢から始める」という強い思いは、地域とともに未来を築くための道標です。
会社概要
- - 会社名:株式会社細谷忠兵衛商店
- - 代表者:細谷幸夫
- - 所在地:石川県輪島市鳳至町稲荷町21番地
- - 金沢拠点:石川県金沢市南町5-5 南町ビル1階
- - 事業内容:輪島塗・伝統工芸品のデザイン、製造、販売、輸出、修理
- - 創業:縄屋助左衛門が興した漆器店が前身
今後の活動にぜひ期待してください。