2025年の展望:ディープラーニングの進化
日本ディープラーニング協会(JDLA)の理事長、松尾豊氏が2025年の初めに、AI技術の進展についての見解を示しました。昨年の進展を振り返りつつ、今後の発展への期待を語る内容です。
昨年の技術的進展
2023年において、生成AI技術の急速な発展が見られました。特に、OpenAIから発表された動画生成モデル「Sora」や、その後の「o1」および「o3」の登場は業界に革命をもたらしました。これにより、AIの推論能力が飛躍的に向上し、より高度な問題への対応が可能に。これらの技術は推論のスケール則が重要視されることを示しています。
米国の企業も同様に、次々と高性能な生成AIサービスのリリースを行っており、それに伴い、企業でも「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」の導入が進展しました。特に「AIエージェント」という概念は、従来の入出力を超え、多様なツールやAPIを組み合わせることができる技術へと進化しています。
物理世界におけるAIの進展
物理的な環境でのAIの活用も注目を浴びており、ロボット基盤モデルの研究が進み、トランスフォーマーベースの「RT-X」が現実的な精度を実現しています。特に、Physical Intelligence社の「π0」モデルは、ロボットの利用シーンに新たな可能性をもたらしました。
ノーベル賞でのAIの影響
2023年は、AIに関連するノーベル賞の受賞が相次ぐ年でもありました。ディープラーニングの父、ジェフリー・ヒントン氏の受賞は非常に意義深いものであり、その業績を多くの人々が称賛しました。また、ノーベル化学賞では、Google DeepMind社の「AlphaFold」によるタンパク質の立体構造予測技術が評価され、科学界でのAIの重要性が再確認されました。
AIに対する法制度と議論
技術発展に伴い、AIのリスクや法制度についての議論も活発化しています。整備されたEUの「AI Act」や日本の「AIセーフティ・インスティチュート(AISI)」の設立はその一例であり、法制度の整備が急がれる状況です。これに伴い、内閣府のAI戦略会議に基づき、AI制度研究会が設置され、AIのイノベーションとリスク対応を両立させるための議論が進行中です。
人材育成と資格試験
また、AI技術の発展にともない、JDLAでは人材育成に力を入れており、G検定やE資格の合格者数は増加の一途をたどっています。特に、自動生成AIに特化したGenerative AI Testも導入され、多くの受験者が合格しています。教育機関での高専DCONの開催や、新たに設立された「法と技術の検討委員会」なども注目されています。これら全ての活動は、社会全体でAIの技術を深く理解し、活用するための基盤を築いていくためのものです。
2025年への抱負
松尾氏は、2025年がより一層、飛躍の年となることを期待しており、JDLAが進める活動を通じて、AIの学びを深め、社会全体が強化されていくことを目指したいと結んでいます。ディープラーニング技術を通じて、日本の産業競争力の向上を図ることが、これからの課題となります。また、多くの方々がこれに関心を持ち、支援してくれることを願っています。