東京消防庁の生成AIを活用した救急医療システム
東京消防庁は、生成AI技術を用いた新しい救急医療情報システムの実証検証を行うため、TXP Medicalと協定を結びました。この日本初の試みとなるシステムは、「NSER mobile」と名付けられ、音声入力によって救急隊員が現場で得た傷病者情報をデジタルで記録することを可能にします。これにより、情報の効率化と精度向上が期待されているのです。
背景
東京都の救急出動件数は年々増加し、2025年には前年比で約13%の増加が予測されています。令和2年には720,965件の出動がありましたが、令和5年には918,311件に達するとされています。この増加は、日々の救急隊の負担を増大させており、業務の効率化が求められています。東京消防庁では、2021年からデジタル改革に向けた「東京消防庁改革本部」と「DX推進検討部会」を設置し、具体的な施策を進めています。
NSER mobileの特徴
新システム「NSER mobile」は、救急隊と医療機関の間でデジタル情報を共有するためのシステムです。救急車内に搭載されたタブレットを使用し、音声入力を通じて得られた情報をリアルタイムで構造化します。これにより、従来の手動入力による時間的なロスや誤記入のリスクを大幅に削減します。狙いは、救急隊員が手を使うことなく、音声のみで情報を記録・共有できるようにすることで、より迅速かつ安全な事故対応を実現することです。
実証検証の目的
今回の実証検証では、以下の点が重要な目的として掲げられています。
1.
音声入力の精度: 救急医療情報システムにおける音声入力の効果を検証。
2.
時間の測定: 新システムの導入による効果を数値化し、業務の迅速化を評価。
3.
情報共有の改善: 救急隊と医療機関間のコミュニケーションの円滑化による医療体制の向上。
これを達成することで、搬送先の病院が決まるまでの時間短縮や、救急隊員の書類作成業務にかかる負担の軽減が期待されます。
期待される効果
今回のプロジェクトにおいて、以下のいくつかの期待される効果が挙げられています。
- - データの正確性向上: 救急隊が音声入力で情報を記録することで、誤入力が軽減され、リアルタイムでのデータ分析が行えるようになります。
- - 救急活動報告書作成の簡素化: 新たな報告書作成機能により、文書作成にかかる負担が軽減され、業務効率が向上します。
- - 医療機関との連携強化: 情報共有の迅速化により、病院が受け入れるまでの時間が大幅に改善され、患者にとっても迅速な治療が実現します。
今後の展開
この実証検証は2024年11月から始まり、来年4月まで続く予定です。まずはデモンストレーションを経て、実際の救急搬送にこのシステムを導入する予定です。これを通じて、今後の救急医療のあり方についての研究も進められ、救急現場でのデジタル化の重要性がさらに高まることでしょう。全ての施策が実現すれば、東京における救急医療の質の向上が期待されます。
TXP Medical株式会社は、医療データを活用して救命活動を支援する企業であり、このプロジェクトを通じて医療現場の改革を支援していきます。今後もこのような取り組みが広がり、全国の救急医療システムにおけるデジタル化が進むことが期待されます。