ナノプラスチック新手法
2025-01-15 11:11:52

新たなナノプラスチック分析手法が環境問題解決に寄与

近年、環境問題が深刻化する中で、特にマイクロプラスチックとそのなかでも更に小さいナノプラスチック(NPs)が注目されています。ナノプラスチックは、標準的なプラスチックよりもそのサイズが小さく、生物や環境に与える影響が不明な点が多く、これまでの研究ではその特性を解明することが困難でした。多様な分野から研究が進められるなか、芝浦工業大学の田邉匡生教授が提案した新たな手法が、ナノプラスチックの化学的特性を解明する大きな助けとなることが期待されています。

この手法は、株式会社東レリサーチセンター、山形大学、東洋大学、東北大学と共同で成立したもので、マイクロバブルを利用して水中の微量のナノ粒子を凝集させ、その化学的特性を原子間力顕微鏡(AFM)と赤外吸収分光法(IR)を組み合わせた解析方法(AFM-IR)で評価するものです。今回は、この新手法の詳細とその背景について探ってみます。

研究の背景


海洋に無数に存在するマイクロプラスチックは、食物連鎖を通じて生物に取り込まれ、最終的には人間にも悪影響を及ぼす危険があります。特に、ナノプラスチックはそのサイズゆえに、同様の影響を及ぼす可能性があるものの、その動態や影響については解明されていない部分が多く、さらなる研究の必要性が叫ばれています。一方、ナノプラスチックは分量が微小であるため、その化学的特性を測定するための新しい手法の開発が急務です。

この研究では、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムからナノ秒レーザーアブレーションを使用して生成されたナノ粒子を用いており、その化学的特性をマイクロバブルで濃縮したのち、AFM-IRで測定する新しい手法が提案されています。これにより、高精度でナノプラスチックの特性を解析し、環境中での挙動についての新しい知見が得られることが目指されています。

研究方法とアプローチ


今回の研究手法では、極めて微量のナノプラスチックをマイクロバブルによって集約し、AFM-IRを用いて詳細にその特性を測定します。研究チームは、ナノ粒子のサイズを数十nmから数百nmの範囲で確認し、特に200nm前後の粒子が多く存在するとの結果を得ました。その上で、極めて低濃度のナノ粒子を効率良く回収し、ZnSe基板上に配置することに成功しました。

AFM-IRによって、ナノ粒子の詳細な化学的情報が取り出されます。特に、ナノプラスチックの分子構造に関するデータを高精度で得ることができ、多様な環境問題への理解が進む可能性があります。これにより、ナノプラスチックと物質との相互作用に関する有用なデータも得られ、科学界や環境政策に盾となる情報を提供できるでしょう。

今後の展開


この新手法を利用することで、環境問題に対するさらなる研究が進むことが期待されます。特にナノプラスチックの化学的特性を詳しく分析することにより、今後の環境保護活動や規制において重要なガイドラインを提供する役割を果たすことでしょう。また、これは環境科学だけでなく、材料科学や生物学、さらには毒性学など、様々な分野へも波及効果をもたらす可能性があります。

この研究成果は、2025年1月15日、学術誌『Environmental Science: Nano』への掲載が予定されており、多くの専門家による注目が期待されます。今後の研究の進展とともに、ナノプラスチックに関する新たな知識が環境問題の解決に寄与することを願っています。


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芝浦工業大学、株式会社東レリサーチセンター、山形大学、東洋大学、東北大学、科学技術振興機構(JST)
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