障害福祉現場の賃上げ状況調査報告
最近、障害福祉関係の8団体が実施した「障害福祉現場の賃上げ状況調査」では、障害福祉事業所においての賃金改善が見られるものの、全産業との賃金格差が広がっていることが明らかになりました。調査は2025年9月5日から9月22日の間に行われ、1,547の事業所からの回答がありました。
調査の背景と目的
この調査は、物価高騰や人材確保の難しさが経営に影響を与えている中、障害福祉現場の実態を把握するために実施されました。特に、今年度に入り物価が上昇していることは多くの業種に影響を及ぼしており、その中で障害福祉事業所がどのような状況に置かれているのかを理解することが狙いです。
調査結果の概要
調査によると、障害福祉事業者は賃上げを着実に進めているものの、その努力にも関わらず、全産業との賃金格差が広がっていることが報告されました。具体的なデータを見てみましょう。
- - 賃上げ額の推移: 令和6年度の平均月額賃上げ額は9,635円で、令和7年度もほぼ同程度の9,643円でした。これは障害福祉事業者が賃金改善に向けて努力している証拠と言えるでしょう。
- - 賃金格差の現状: 一方で、賃上げ率は全産業が前年度比0.15%増であるのに対し、障害福祉分野は0.12%減であり、格差が拡大しています。
経営上の課題
さらに、調査に答えた障害福祉事業所の95.6%が何らかの経営課題を感じていると答え、その主な原因として以下のような点が挙げられました。
- - 92.2%が「物価高騰の影響により支出が増加している」と回答
- - 76.0%が「サービス提供に必要な人材が確保できない」
このような問題は、賃上げにも影響を与えており、92.8%の事業所が賃上げ実施に際して課題を感じています。特に、85.0%が「現行の報酬では十分に賃上げ額を確保できない」とし、報酬体系に対する不満が浮き彫りになりました。
今後の提言
障害福祉関係団体は、調査結果を踏まえ以下の四つの項目を国に要望しています。これにより、障害福祉事業所が質の高いサービスを提供し続けるための改善が見込まれます。
1. 全産業と同等の処遇水準に向けた加算額、報酬の大幅引上げ
2. 報酬への賃金スライド制・物価スライド制の導入
3. 処遇改善制度の一元化と法人の裁量の拡大
4. 物価高騰対策の財政支援の充実
本調査結果は、障害福祉の重要性を再認識させるものであり、今後の対策が求められる重要な指標となるでしょう。この結果を受けて、国と協力し、福祉業界全体の処遇改善が進むことが期待されます。