町との出会いが生む物語
岩手県陸前高田市の認定NPO法人SETが、2026年度出版予定の書籍『縁がめぐるまちづくり(仮)』に関連して新たなインタビュー連載「SET Another Story」を開始しました。この連載は、地域と人々の出会いがどのような影響を与え、彼らの人生をどう変えたのかを深掘りすることを目的としています。それぞれの物語は、数回にわたる対話を通じて、より丁寧に描かれます。
背景:記録しきれない微細な変化
SETは、東日本大震災後の15年間にわたり、若者と地域住民が共に生活し、学ぶ場を創出してきました。具体的な取り組みとしては、修学旅行民泊や防災学習プログラム、地域おこし協力隊の支援があります。これらの活動を通じて、多くの人々が生きる中で培った「出会い」や「関わり」は、数字には表れにくい重要な側面です。
例えば、ある学生が民泊を通じての小さな会話から進路が変わったり、震災の体験を語る人との対話が人生を見つめ直すきっかけになったりする瞬間がありました。これらは「評価されない時間」や「誰かに必要とされる感覚」といった形で、各々の人生に影響を与えています。
「SET Another Story」の特徴
本連載の特筆すべき点は、SETに関わるメンバー自身が聞き手となり、複数回のインタビューを行うところにあります。単発的な取材と異なり、深い対話を通じて、初めての出会いや気づかなかった違和感、また関係性を深めていく中での価値観変化についてじっくり掘り下げます。
語り手には、都市で働く社会人や地域に根ざす担い手がいますが、共通して言えるのは「町との出会いが何らかの変化をもたらした」という点です。これまでに発信された記事は二つ。「何をすればいいかわからなかった」大学生が地域に飛び込むまでの物語や、「エリートへの憧れ」から「心の豊かさ」へと変わる青年の成長を描いています。
今、なぜ「もうひとつの物語」なのか
現在、地域が抱える人口減少や担い手不足の問題に対し、関わりの内容が数値で語られることが多くなっています。しかし、SETが重視しているのは、目に見えない微細な変化です。それは「自分自身でいられる感覚」や「誰かに必要とされる実感」、さらには自然に生まれる関係性です。
この「SET Another Story」は、地域との関わりを制度的・成功事例的にではなく、個々の人生の物語として捉え直す試みです。SETがなぜこの活動を続けているのか、その答えは数字ではなく、それぞれの語りにあります。この連載は、NPO法人SETの公式noteで随時発信されています。
書籍とクラウドファンディングについて
SETは、書籍『縁がめぐるまちづくり(仮)』の制作に加え、クラウドファンディングも行っています。本書は、震災後の15年間に蓄積された実践知を基に、地域で挑戦を続ける人々を支える内容を目指しています。特に、地域に関わろうとする25歳以下の若者へのギフトとして届ける予定です。
このクラウドファンディングは、単に出版費用を集めるものではありません。本を通じて「挑戦が続く環境」を全国に広げることを目指しています。「SET Another Story」は、その背景にある個々の物語を補完する重要な役割を担っています。
SETの理念と活動の未来
SETは、2011年の設立以来、「一人ひとりのやりたいをできたに変える」ことをミッションに掲げ、地域づくりに取り組んでいます。年々参加者は増加し、現在は岩手県を超えて様々な地域で実践しています。これからも「やりたい」を「できた」へと変える環境づくりを続け、そこで生まれる物語を丁寧に残し、社会に届けていく決意です。これからの連載にご期待ください。