大阪万博での医療と福祉の未来
2025年に開催される大阪・関西万博では、人々の命を守ることをテーマにした「いのち宣言」や新しいアクションプランが発表されました。特に注目なのは、医療と福祉におけるデータの統合とAI技術の活用による新たな個別化ケアの概念です。
データの質的なアプローチ
今日の医療や福祉の現場では、主に年齢や体重、血圧といった量的データに依存しています。しかし、このアプローチは、患者の実際の生活習慣や心理状態といった質的な要素をしっかりと捉えていないため、個々のニーズに精確に応じたケアが難しいのが現実です。では、質的データとは何でしょうか?それは、患者が抱える感情や生活上の困難など、数字では表現できない情報のことを指します。
最近のAI技術の進展により、こうした質的データを活用することで、患者一人ひとりに最適なケアや予防策を予測し、提供できる可能性が広がっています。
AI予測モデルのイメージ
「いのち会議」は、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)と共同で、医療と福祉の統合データサイエンス基盤の構築を目指しています。これにより、質的データを取り入れたAI予測モデルを構築し、よりきめ細やかな健康ケアの提供に向けた取り組みを進めています。個々の背景やニーズに応じたケアが可能となることで、地域全体の健康を促進する効果が期待されています。
生活と寄り添う医療の実現
AIと予測分析の進展を受けて、現在の医療現場では、質的データをどう活用していくかが課題となっています。AI予測モデルのさらなる向上には、患者の体験や感情を理解するための質的データの導入が不可欠です。新しいアプローチでは、患者の語りや体験談など、より深い情報を取り込むことで、生活に寄り添った介護や疾病予防が実現できると期待されています。
例えば、新たに開発される「CHR(Contextual Health Records)」モデルは、医療や介護に関与する全ての人が患者の生活状況やニーズを共有するためのフレームワークを提供します。これにより、より個別性の高いサポートを実現し、医療と福祉の質を高めることが可能になります。
具体的な取り組みの進行
このプロジェクトでは、質的データを集めるために看護記録や患者の語りを分析し、それを医療記録(EHR)や個人健康記録(PHR)と統合する大規模データベースを構築します。また、自然言語処理(NLP)技術を使い、AIが患者の生活スタイルやメンタルヘルスを学ぶことで、個別のニーズに即した健康アドバイスを提供できる環境を整えます。
さらに、量的データと質的データの融合を推進する新しいAIモデルの開発に取り組み、実際の医療現場でその効果を検証する予定です。一般市民や専門家を対象としたワークショップを開催し、人々の体験を集めることで質的データの強化とAIモデルの有効性を広めていきます。
地域社会と医療の連携
「いのち会議」は、こうしたアクションを通じて個々の患者や介護者に対する最適なケアと予防策を提供し、地域共同体と科学の協力を深化させることで医療と福祉の質の向上と、持続可能な社会の実現に貢献していく考えです。この新しい取組みがもたらす未来の医療の姿は、多くの人々にとって希望の光となりそうです。