カカオ産業における児童労働の問題は、世界中で深刻な懸念を集めています。この問題に対抗するために、認定NPO法人ACEは2009年から児童労働撤廃に向けた活動を展開してきました。特に、オーストラリアのNGO「Be Slavery Free」が主導する「世界チョコレート成績表」は、企業のサステナビリティに基づく評価を提供し、消費者や投資家が購買意思決定を行う際の重要な指標となっています。
この成績表が第6版として2025年に発表されたことを受け、ACEの副代表で共同創業者の白木朋子氏は、日本企業の評価が低迷している現状についてコメントしました。彼女は、「世界の主要チョコレート企業が環境破壊とサステナビリティの観点から評価される中、日本企業は明らかに劣っている。ただし、児童労働に関しては比較的良好な評価が得られた」と述べ、これはACEがこれまで継続的に日本企業に対して行ってきた働きかけの結果であると指摘しています。
2025年は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の一環である目標8.7の達成期限でもあります。この目標は「すべての形態の児童労働を終わらせる」ことを掲げていますが、現時点で世界中には多くの子供たちが危険な環境で労働を強いられています。ACEは、日本の企業、政府、市民社会が連携し、問題の本質的な解決に向けた努力が求められると強調しています。
「世界チョコレート成績表」は、6つの評価項目を基に企業の透明性と説明責任を測ります。その評価項目は、トレーサビリティ、生活維持所得、児童労働、森林破壊、アグロフォレストリー、農薬管理です。2025年版では、81社が対象となり、新たに調査に参加した日本企業も増えているものの、全体的な評価は依然として低いものでした。特に、日本企業は全項目において世界平均を大幅に下回る結果となっています。
ACEは、企業が単独で行うサプライチェーンのモニタリングだけでなく、地域での取り組みを強化することが必要であると指摘しています。ガーナでは、カカオ生産に従事する77万人の子供たちがいると言われており、多くが危険な作業に従事しています。ACEは、この状況を改善するために地域密着型のアプローチを支持し、政府やNGOとの連携が不可欠であると考えています。
また、今年度の成績表においては、児童労働対策プログラムを有する企業は60社中45社と高評価ですが、特に小売業者の中では対応が不十分な企業が多い現状が報告されています。ACEは、このような状況を踏まえ、日本企業に対して、さらなる情報公開や透明性の向上を強く呼びかけています。
今後、企業とNGO、政府が一丸となって、児童労働のない持続可能なカカオ産業の実現へ向けた取り組みを強化することが求められています。これを実現するためには、透明性の提供や具体的なデータの開示が必要不可欠です。ACEの活動は、単なる評価だけに留まらず、未来の子どもたちが健全に育つための環境を整える重要な役割を果たしています。