FLOSFIAが切り拓く酸化ガリウム半導体の未来
株式会社FLOSFIA(フロスフィア)は、酸化ガリウム(α-Ga₂O₃)を用いた次世代パワー半導体の開発において、大きな進展を遂げました。これまで最大の課題であった「p層」技術を克服し、世界初のノーマリーオフ特性を有する10A超の大電流動作を実現したのです。この取り組みは、半導体技術の未来を変える可能性を秘めています。
p層技術の重要性とFLOSFIAのアプローチ
酸化ガリウム半導体の性能を引き出すために、「p層」は極めて重要な役割を果たします。これまで他の研究機関は技術的な難しさからp層を採用せず、シンプルなデバイス構造に留まっていました。しかし、FLOSFIAは「本来の酸化ガリウム材料の高性能を引き出すためには、p層の活用が不可欠」との見解から、独自の技術を開発してきました。
FLOSFIAでは、ミストドライ®法を用いて高品質のp層形成技術を確立し、JBS構造ダイオードの製品レベルでの実証を達成。さらに、技術が進化する中で、MOSFETへのp層適用を目指した新規MOS構造形成プロセスを開発し、技術的なハードルを突破しました。これにより、ノーマリーオフ動作や大電流特性など、MOSFETの重要機能を世界で初めて具現化しました。
技術の進化と実績
これまでのFLOSFIAのp層技術の進展は、次の通りです:
- - 2023年1月:新規p層のデバイス適用に成功し、ジャンクションバリア効果を確認。
- - 2023年3月:JSRとの共同研究により、量産を前提にしたp層成膜技術開発に成功。
- - 2024年12月:p層を用いたJBS構造ダイオードで10A級の大電流サンプルを製作。
- - 2025年6月:さらに改良したp層をMOSFETに適用し、世界初の10A超の大電流動作を実証。
このタイムラインは、FLOSFIAがどれほどの速さで技術的な進歩を遂げているかを示しています。特に、ノーマリーオフ特性を持つMOSFETの実現は、今後のパワーデバイス市場に大きく寄与するでしょう。
さらなる挑戦と市場への貢献
FLOSFIAの技術は、今後耐圧構造の導入や高耐圧化に向けた研究開発を進めていく予定です。激動する市場環境の中、特に電動化や省エネ化のニーズの高まりに対応するため、パワー半導体市場は大きな転換期を迎えています。FLOSFIAはこのチャンスを生かし、酸化ガリウム技術を駆使して新しい市場に迅速に適応していく方針です。
FLOSFIAの半導体技術は、SiC比で基板コストを最大50分の1まで低減できる可能性を秘めています。また、LED量産設備の転用や薄膜デバイス転写技術との連携によって、高品質かつ低コストのパワーデバイス量産体制を確立することが期待されています。
持続可能な未来を見据えて
2008年の京都大学での新しい酸化ガリウム薄膜開発以来、FLOSFIAは数々のイノベーションを達成してきました。2026年度以降の本格量産開始を計画しており、持続可能な成長を目指し、世界に向けた技術競争力を発信し続けることでしょう。
FLOSFIAは、環境負荷を低減する「半導体エコロジー®」を掲げ、さまざまな分野で社会的価値の創出に貢献していくことを誓っています。今後の展開が非常に楽しみです。