研究の背景
近年、ウェアラブルデバイスの普及により、個々の健康状態を日常的にモニタリングすることが可能になりました。特に、歩数や心拍数、睡眠パターンのデータが健康管理において重要な役割を果たしています。これまでの研究では、歩数の増加が全死亡率や慢性疾患リスクを低下させることが報告されており、ウェアラブルデータを活用した健康リスクの評価が急務とされています。
しかし、日本国内においては、科学的根拠に基づいた基準値の整備が進んでいない現状がありました。海外で実施された大規模な研究に比べ、日本人の特性を反映した基準値が不足していたのです。そこで、テックドクターは約2,000名の従業員から収集したデータをもとに、日本人就労世代における活動・睡眠・心拍変動の基準値を構築する研究に着手しました。
研究の目的と方法
本研究では、Google Fitbitを使って収集したデータを解析し、活動量、睡眠、心拍変動に関する16の指標について年齢や性別ごとの基準値を設定することを目的としました。使用したデータは約50万名日分に及び、それに基づいた病状の予測や健康指導の向上が期待されます。
研究対象者は、企業に勤務する25歳から65歳の従業員1,996名です。データは2023年から2025年の約2年間にわたって収集され、寝ている間の心拍変動や睡眠ステージ(覚醒・REM・浅い・深い)など、詳細な情報が蓄積されました。
研究方法の要点
- - 対象者: 25〜65歳の企業従業員1,996名
- - 期間: 2023年1月〜2025年11月
- - データ内容: 1分ごとの活動量データや睡眠中の心拍変動
- - 解析対象者数: 測定条件によりフィルタリングされた人数で解析を実施
研究結果と考察
研究の結果、心拍変動の基準値は年齢とともに低下し、特に男性でその傾向が顕著でした。25歳の時点での中央値は男性が32ms、女性が27msですが、60歳になると男女差が縮小しました。
活動量については、年齢に関連した大きな変化が見られず、中高年でも比較的一貫して歩数が維持されていることが確認されました。睡眠時間は加齢と共に減少し、それに伴って睡眠の質も低下することが示唆されています。25歳では男性が7.1時間、女性が7.7時間であったものの、65歳ではそれぞれ6.6時間、6.7時間と減少していました。
特に、心拍変動や睡眠時間の基準値が、健康リスクと関連している可能性が示されたことが重要です。解析を進めた結果、既往歴のある人やメタボリックシンドロームの基準に該当する群では、心拍変動の低下や心拍数の上昇が認められました。これにより、基準値からの逸脱が健康リスクと関係することが明らかになりました。
研究成果の社会的意義
本研究は、日本国内で約2,000名・延べ50万名のデータをもとにした大規模な基準値構築研究であり、個々人の健康状態を客観的に評価する基盤を提供します。特に、これらの情報は生活習慣病の早期発見や、個別化された健康指導にも期待され、企業における産業保健領域での活用が見込まれます。
テックドクターは、今後もウェアラブルデータを活用して、ヘルスケアの新たな可能性を開拓していく姿勢を続けます。
学会発表情報
発表された研究成果は、2026年5月30日開催の第99回日本産業衛生学会にて口頭発表されます。この成果は、今後の健康管理の在り方に革命をもたらすものとして、注目されるでしょう。
【参考文献】
- - Paluch AE, et al., "Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. Lancet Public Health, 2022. DOI: 10.1016/S2468-2667(21)00302-9"
- - Brittain EL, et al., "Association of step counts over time with the risk of chronic disease in the All of Us Research Program. Nature Medicine, 2022. DOI: 10.1038/s41591-022-02012-w"
テックドクターについて
株式会社テックドクターは、データを活用した新たなヘルスケアの創出を目指して活動しています。ウェアラブルデバイスから得られるデータを用いて、疾病予測や健康管理の向上に力を入れています。彼らのビジョンは、我々の健康状態をデータで可視化し、より健全な社会を実現することです。
公式ウェブサイト:
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