高血圧診断を変えるAIの可能性
アイリス株式会社(東京都中央区)は、咽頭画像を使って高血圧を高精度で検出するAI技術の研究成果を発表しました。この研究は、世界の約40%の成人が影響を受ける高血圧の早期発見に寄与するものとして注目されています。
研究背景
高血圧は心筋梗塞や脳卒中といった深刻な合併症を引き起こす一因とされており、日本だけでなく、世界中で重要な健康課題とされています。特に、低・中所得国では医療アクセスが難しい状況が多く、未診断の患者が数多く存在していることが問題視されています。この課題に取り組むため、アイリスは咽頭画像を用いた新たなAIアルゴリズムの開発に着手しました。
研究方法と成果
本研究では、咽頭画像に加え、患者の年齢や性別といった属性情報を組み合わせ、AIによる高血圧の検出精度を高めるための臨床試験データの分析を行いました。その結果、AIアルゴリズムのAUCは92.2%という非常に高い精度に達しました。
この成果は、日本におけるプライマリ・ケアの現場でのAIの実用化に向けた大きな一歩とされています。咽頭画像から高血圧を特定することで、今後の医療の進化が期待されます。
今後の展望
今後、咽頭画像を利用した高血圧の検出方法は、対面診療を必要とせず、遠隔医療の一環としても活用される可能性があります。この研究では特別に設計された医療用カメラを使用しましたが、将来的には一般的なスマホを用いて患者が自撮りした画像からも血圧を推測できる仕組みが構築されるでしょう。
特徴と利点
画像診断を通じて病気を特定できることは、従来の診療スタイルとは大きく異なります。これにより、患者は物理的な接触なしに高血圧のリスクを評価されることができます。その結果、診断の迅速化と患者の医療へのアクセス向上が見込まれています。
調査論文情報
この研究に関する論文は、2024年10月23日付の『BMJ Health & Care Informatics』に掲載されました。論文は「Detection of hypertension from pharyngeal images using deep learning algorithm in primary care settings in Japan」というタイトルで、著者は複数の専門家によって記されています。
アイリス株式会社について
アイリスは「共創できる、ひらかれた医療をつくる」というミッションのもと、2017年に設立されました。代表の沖山翔をはじめとする医療とAIの専門家が集まっており、医療現場における技術革新を推進しています。今後も、AIを用いた医療機器の研究開発に注力し、質の高い医療を提供していく姿勢を崩しません。
本研究は、今後のAI医療機器の発展と、患者にとっての医療の進化を象徴するものとなるでしょう。