手間を選ぶことで生まれる新しいものづくりの形とは
現代社会では、効率や時間の使い方が重視される傾向が強まっています。しかし、その反面、時間をかけて丁寧に作り上げる『手仕事』や『ものづくり』の重要性が見直されています。特に、ゼロウェイストファッションブランド『点と線と面』は、廃棄された布地を日本の伝統技法「刺し子」を用いて再生するプロジェクトを立ち上げました。これは、単なるリサイクルを超えた「新しいものづくり」の形を提案しています。
手間に込められた価値
『点と線と面』のプロジェクトにおいて、手仕事である刺し子は一見、効率的とは言えない作業です。しかし、ひと針ひと針手を動かして作ることによって、作り手との深い関係が生まれ、その結果、長く愛される製品が生まれます。このプロジェクトでは、捨てられる運命にあった布を使い、それに命を吹き込む「手間」を意義あるものとして捉えています。
「手間がかかるからこそ得られるものがある」。この考え方は、プロダクトだけでなく、作り手にも当てはまります。作り手それぞれが持つ生い立ちや思いを反映した製品は、ただの商品ではなく、まるで生きた物語を綴るような存在になるのです。
プロジェクトの背景と特色
このプロジェクトを立ち上げたのは、元アパレルデザイナーの伊藤愛さん。「捨てれるはずの布が誰かの物語になるまで」という思いを胸に、彼女はこのゼロウェイストファッションブランドを設立しました。様々な色や柄の布地が、一つ一つの製品として蘇る姿は、新しい価値観のものづくりを象徴しています。
プロダクトはすべて一点もので、異なる刺し子の柄や素材の組み合わせによって、唯一無二の存在として仕上がります。使っていくうちに愛着が増し、必要に応じてリペアも可能であり、作り手との絆も深まっていくのです。このように、プロジェクトはただのファッションを超え、生活に寄り添う相棒のような役割を果たします。
福祉とものづくりの結びつき
特に注目すべき点は、福祉施設との連携です。プロジェクトには、個々の特性を持つ人々が参加しています。彼らの「得意」や「好き」を活かして、それぞれのペースで刺し子に取り組む姿は、モノ作りを通じて新たな働き方を提供しています。彼らは自分の個性を針と糸で表現し、そこには個々の物語が宿るのです。
クラウドファンディングで広がる支援の輪
このプロジェクトは、クラウドファンディングプラットフォーム「READYFOR」を通じて、支援を募っています。2025年4月10日までの期間中、特別なリターンと共に支援を受け付けており、例えば洋梨モチーフのコースターや刺し子入りランチョンマット、個性的なバッグなど、多彩なアイテムがラインナップされています。
未来を見据えた展望
今後『点と線と面』は、ブランドの公式ウェブサイトを立ち上げ、さらに多くの人々にこのプロジェクトの意義を伝えるべく広がりを持たせていく計画です。福祉や伝統工芸とファッションという異なる分野が交わることで、新しい循環のモデルが形成されることでしょう。この活動が、人と地域、社会を結ぶ糸のような存在になっていくことを願っています。
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