「外で目にする看板の4枚に1枚は高昇のもの」 高昇グループ会長郭升氏インタビュー - 日本市場を席巻する戦略とは?
在日華人の郭升氏が設立した株式会社高昇は、わずか10年という短期間で日本の屋外広告業界でトップシェアを獲得し、「外で目にする看板の4枚に1枚は高昇のもの」と言われるまでに成長しました。その急成長は、中国中央テレビ(CCTV)の番組「華人世界」でも取り上げられるほど注目を集めています。
看板・屋外広告・道路標識の業界でリーダーであり続ける株式会社高昇は、さらなるモデルチェンジを遂げ、日本におけるeコマース・マトリクスを構築。いまや中国の企業が海外進出する際の水先案内人となっています。
本誌は、株式会社高昇の創業者である郭升氏と会談し、いかにして浮沈を乗り越え、いかにして市場を強化してきたのかについて話を伺いました。
成功から成功へという必然
2020年、日本ではコロナが効果的に抑制できているという楽観的な雰囲気が支配的でしたが、郭升氏は国際情勢の変化にいち早く着目していました。変異ウイルスの感染経路から、その影響が日本に波及する可能性と時期を予測し、国際的な物流ネットワークが完全に遮断されたことで中国製のマスクや防護服が輸入不可能となる事態を看破したのです。
郭升氏は巨額の資金を投じて生産設備を購入し、日本、韓国、中国、台湾などから原材料や部品を調達。飛沫防止透明パーテーションや非接触型検温消毒器を製作しました。これらの製品は、発売後わずか2か月で市場シェアの50%を獲得するほどの人気となり、24時間フル稼働の生産ラインがその先見性を証明しています。
ヒット商品の数々
株式会社高昇は、自社が所有する生産工場を活用し、顧客のニーズに応じた様々な新製品の開発や受注生産を行っています。ハイエンドを求める市場の信頼を獲得すると同時に、海外メーカーとの代理店契約を結び、上流工程のリソースを完全にコントロールしています。
「これは広告のデザインと同じで、移り変わる市場の動向や個々の顧客のニーズを注視する必要があるのです。つまり、正確なマーケットポジショニングと具体的なユーザーニーズの見極め、これこそが勝利への鍵なのです。」
郭升氏は、看板の製作とデザインによって培った消費者心理の分析力をeコマース事業にも活かしています。
データ分析システムとeコマース・マトリクスの構築
広告業界での十数年の経験を通して、郭升氏は市場での経営と販売の根幹には、ユーザーと市場のニーズを重視するという点があると確信しています。
「数多くの老舗ブランドが、卓越したクオリティを武器に過去数十年にわたって確乎たる称賛を勝ち取ってきました。しかし、eコマース全盛の現代においては、老舗ブランドがZ世代の心をつかむことは難しいかもしれません。新世代の消費者たちのニーズとペインポイントを正確に把握できなければ、たとえ老舗ブランドであっても容易に販売不振に陥る可能性があります。」
郭升氏は、消費者を細分化し、特定の消費者グループ向けに開発された商品で自社商品を囲い込むことをeコマースにおける経営の必勝策と考えています。
具体的には、25歳から35歳の女性をターゲットに据え、データ分析システムを活用して、日本市場で驚異的な売り上げを伸ばす商品を発掘しています。その分析結果は、日本の大手生活雑貨ECサイトであるアイリスオーヤマの成長トレンドと幾度となく一致しており、システムの有効性を証明しています。
内と外で力を合わせ、エネルギーを持続させる
数百人の従業員を抱える企業の成長を維持し、ブランドの創造力を刺激し続けることは、新たな課題です。郭升氏は、物流・倉庫・運営といったリソースを共有し、利益を分け与えることを惜しみません。従業員がマーケティング・マトリクスのなかで起業することを奨励するなど、思い切った構造改革を進めています。
2023年、メディアでは「出海熱(海外進出ブーム)」という言葉が踊りました。しかし、あらゆる販売行為は地域に根ざしたものであるということを忘れてはなりません。ユーザーマインドの醸成、倉庫管理と物流システムの構築、現地密着型のオペレーションの実現など、それはたとえすでに知名度のあるブランドであっても容易なことではありません。
郭升氏は、中国国内のメーカーに向けても積極的に協力を呼びかけています。製造から智造(スマートな製造)へと進化を続ける中国企業にとって、株式会社高昇は海外市場進出の強力なパートナーとなるでしょう。
取材後記
商品の製造からeコマースプラットフォームへ、単なる製造からインテリジェントな製造へと、株式会社高昇が遂げた驚異的なシフトチェンジは決して偶然ではありません。その成功の背後には、郭升氏が主導する消費者グループの高解像度化、利益項目の合理化、ローカライズされた市場の正確な把握、そしてオープンかつWin-Winで事業を進めるというコンセプトが、確かに存在するのです。