新しい埋葬の形「いのちを還す森」
最近、自分の埋葬先に対する考え方が変わりつつあります。従来のお墓を「買う」のではなく、仲間と共に育み、自然とつながりを取り戻す新しい埋葬方式が登場しました。それが、岩手県遠野市を拠点とした一般財団法人ハヤチネンダが推進する「いのちを還す森」というプロジェクトです。
プロジェクトの背景
「いのちを還す森」は、かつて薪炭林として利用されていた広葉樹の森の一角で行われる埋葬プロジェクトです。団体は、2010年代の初旬から活動を開始し、森の手入れを行いながら、会員を募ってきました。現在、多様な命が息づくこのエリアでは、自然との共生を意識した新しい葬送の形が模索されています。
埋葬にあたっては、従来の墓碑や墓標は設置せず、粉末化された遺骨を直接土に混ぜて埋葬します。そして、埋葬された後も会員たちが森の手入れを月に一度行い、共同作業を通して自然との距離感を大切に育てていきます。この活動を通じて、会員たちは単なる埋葬の場を超えて、命が生み出す新たな景色を共に育むことになります。
活動の拠点
「いのちを還す森」の活動拠点は、JR遠野駅から車で20分の位置にあります。訪れることで、人々が都市から自然へと還る感覚を体験できるのも大きな魅力です。ここでは、コナラやカエデといった広葉樹に囲まれた環境で行われる手入れや埋葬が、会員同士の新たな絆を生む場にもなっています。
市街地の活動とオンライン
また、ハヤチネンダでは、東京・新宿にて会員同士が気軽に集まれる場所を設けています。ここでは、森の様子を共有しながら、意見交換が行われ、メンバー同士の新しい関係を育む機会が創出されています。
さらに、在宅で参加できるオンラインプログラムでは、「いのち」と「自然」をテーマにした講演や対話の場が設けられています。参加者は、多様な視点に触れながら、自らの死生観を考えることができます。このような活動を通じて、メンバーはまるで懐かしい故郷に戻るような心温まる体験をすることができるでしょう。
現代の葬送の変化
日本では1990年代から、家の墓を持たない個人墓の考え方が浸透してきましたが、現代では海洋散骨や宇宙葬など新たな葬送り方も登場しています。だからこそ、現代の人々が共同体や自然から切り離されず、命と他者、自然とのつながりを再び見出すためには、購入ではなく、共に育む葬送の形が重要です。
「いのちを還す森」プロジェクトは、地縁や血縁を超えた新しいつながりを生み出し、参加者が自然とともに生きる喜びを再発見する機会を提供しています。
説明会のご案内
興味のある方は、ぜひプロジェクトの説明会にご参加ください。オンラインや東京での会も開催され、詳細は公式サイトで確認することができます。参加者の皆さまが、「いのちを還す森」で新たな出会いやつながりを見つけることができることを願っています。