アジアの個人投資家は株式投資へシフト?フィデリティ調査が明らかに
フィデリティ投信株式会社が発表した、フィデリティ・インターナショナルによるアジア太平洋地域の個人投資家調査の結果が注目を集めています。
今回の調査では、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待が、アジアの投資家の行動に大きな影響を与えていることが明らかになりました。調査対象となった6つの地域(日本、中国本土、香港、台湾、シンガポール、オーストラリア)の半数以上が、今後株式投資を増やすことを検討しているとのことです。特に台湾、シンガポール、オーストラリアではその傾向が顕著で、6割以上の投資家が株式への投資拡大を検討しています。
また、インカム収入を得られる資産への投資を検討している投資家も全体の64%に上り、台湾、オーストラリア、シンガポールでは7割を超えています。一方、債券への投資意向は全体で28%と、株式やインカム収入型資産に比べて低い結果となりました。
長期的な資産形成意識は高いが、若年層は短期的な投資傾向
調査では、長期的な資産形成を目的とする投資家の割合が高いこともわかりました。全体の半数以上、日本の場合は7割を超える投資家が、長期的な資産形成のために投資を行っているとのことです。しかし、18歳から29歳の若年層では、5人に1人しか投資期間を5年以上と考えていないという結果も出ており、長期投資の重要性に対する意識に世代間格差が見られることもわかりました。
日本では国内投資が人気、NISA制度への関心も高い
今後12か月以内の投資先としては、米国が最も人気が高い一方で、日本では国内投資を検討している人が半数以上と、米国やグローバル投資よりも高い結果となりました。これは、今年1月に始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)の影響や日経平均株価の最高値更新など、日本市場に対する投資意欲の高まりが背景にあると考えられます。
NISA制度の利用目的としては、「老後の資産形成(年金の補完)」がトップとなりました。これは、日本の投資家が将来の年金不安を感じていることを示しており、長期的な資産形成の手段としてNISA制度を活用したいと考えている人が多いことがわかります。
しかし、若年層では、「資産を増やすため」という回答が多く、老後だけでなく、人生の様々な場面で資金が必要になることを意識している様子が伺えます。
投資家のリスク許容度は世代によって異なる
NISAで投資する資産を選ぶ基準については、全ての年代で「効率性重視」がトップとなりました。しかし、40代までの若中年層では「リターン重視」、50代以降では「リスク重視」の割合が高くなっています。特に29歳以下の若年層では、情報収集を積極的に行い、投資判断を行っている傾向が見られました。
長期投資の重要性と専門家のアドバイス
フィデリティ投信の商品開発部長 松本学氏は、日本の投資家の長期的な資産形成意識の高さに触れつつ、年齢や状況によって最適な資産配分やリスク許容度が変化することを強調しています。長期投資では、個々のライフプランやゴールに合わせた資産運用を継続的に見直すことが重要であり、専門家のアドバイスを活用することも有効だと述べています。
まとめ
今回の調査は、FRBの利下げ期待がアジアの個人投資家の行動に大きな影響を与えていることを示しており、長期的な資産形成の重要性と、若年層における投資意識の世代間格差という課題も浮き彫りにしています。投資家は、自身の状況や目標を理解し、長期的な視点を持って資産運用に取り組むことが重要となります。