高齢者のうつ症状と便秘の関連性を示す新たな研究
順天堂大学の研究チームが、984人の高齢者を対象に実施した研究において、高齢者のうつ症状と便秘の症状に関連性があることを示しました。この研究は、日本で初めて実施されたもので、国際的に広く用いられる評価スケールを使用して行われました。
研究の概要
本研究は、老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale-15、GDS15)、消化器症状関連QOL問診票(出雲スケール)、便秘症状重症度(CSS)を用いて行われました。対象となったのは、順天堂大学医学部附属病院の内科を受診した65歳以上の高齢者984人で、男女の割合は男性427名、女性557名、平均年齢は78.1歳です。
研究結果
研究の結果、うつ症状の重症度と上部・下部腹部の症状、また便秘の重症度が相関していることが明らかになりました。具体的には、GDS15スコアが正常な高齢者は603名で61.3%を占め、軽度のうつを抱える高齢者は319名(32.4%)、中等度から重度のうつを抱える高齢者は62名(6.3%)でした。全体の38.7%が軽度ないし中等度から重度のうつを抱えていることが分かりました。
図にも示されているように、GDS15スコアの高い高齢者は便秘の症状がより重症であり、このことからも両者の健康への影響が明らかになりました。これほどまでの関連性が示されたことは、日本における高齢者医療の重要な知見となります。
背景と重要性
日本は世界でも有数の超高齢社会であり、高齢者人口は2024年には29.3%に達することが予想されています。高齢者においては、うつ症状が生活の質を低下させる要因として、食欲不振や生命予後にも影響を与えることが知られています。一方、便秘症状は若年層よりも高齢者に多く見られ、特に70歳以上では男女の差も少なくなります。さらには、便秘症状も生活の質を低下させ、心血管疾患や脳血管疾患とも関連があるとされています。このように、いずれの症状も健康に重大な影響を及ぼすため、早期の予防と対策が必要です。
今後の展開
順天堂大学は、超高齢社会における健康寿命の延伸を目指し、ペンシリ症外来や長寿いきいきサポート外来などの診療体制を整えています。この研究結果を基にして、高齢者の健康問題に対する新たな介入や予防策を考案し、臨床研究を進めていく方針です。
この研究成果の重要性は、今後の高齢者医療において便秘やうつ症状の予防・対策がますます重要になってくることを示唆しています。医療従事者や研究者、さらには社会全体で高齢者の健康をサポートする体制を築いていく必要があります。
用語解説
- - 老年期うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale-15): 高齢者のうつ症状を評価するために国際的に利用されている尺度
- - 消化器症状関連QOL問診票(出雲スケール): 消化器の健康に関連するQOLを評価するための質問票
- - 便秘症状重症度(CSS): 便秘の重症度を評価するスコアシステム
この新たな知見が高齢者の健康促進に寄与することが期待されています。