慶應義塾大学が新たな抗体精製法を開発
慶應義塾大学の研究チームは、抗体医薬品の生産における最新の成果を発表しました。近年、抗体医薬品はがんや自己免疫疾患の治療において重要な役割を果たしていますが、その生産コストの中で、抗体の精製は特に高い比率を占めており、コスト削減が急務とされていました。
研究の背景
抗体精製では従来、プロテインAカラムが広く使用されてきました。しかし、この方法には低安定性や高コストという欠点があり、さらに低いpH条件での溶出により、抗体の活性が損なわれるリスクも存在します。これに対し、慶應義塾大学の研究グループは、合成高分子によってプロテインAの抗体結合領域を模倣した新しい手法を開発。これにより、従来の方法に比べて様々な利点を持つ抗体精製が可能になったのです。
新たな抗体精製法の詳細
研究チームは、合成高分子を使用して、高速液体クロマトグラフィー用のカラム充填剤の表面を修飾しました。この新しい充填剤は、中性pHで抗体を保持し、酸性pHで抗体を溶出するという特性を持っています。実際の実験では、ハイブリドーマ細胞培養上清から80%を超える抗体の回収に成功し、精製条件の設定においても優れた成果を求めることができました。
さらに、この新しい抗体精製法は、100回の連続使用や半年間の実験後でも再現性の高い回収率を維持しており、再利用性や耐久性が確認されました。これによって、抗体の活動を損なうことなく、製造プロセスの経済性が向上します。
今後の展望
この技術が商業化されれば、抗体医薬品の市場に与える影響は計り知れません。抗体医薬品は市場規模が急速に拡大しており、コスト削減に寄与することが期待されています。
今回の研究成果は、2024年11月26日にアメリカ化学会誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載される予定です。この新技術が抗体精製の新たなスタンダードとなることが期待され、医療分野において大きな進展がもたらされることでしょう。
参考文献
詳細については、慶應義塾大学のプレスリリースをご覧ください。
慶應義塾大学 プレスリリース